第1072話 最後の攻防。
「……俺は、閃光を纏(まと)う冒涜――その強大な器に寄生する亡霊。『この上なく尊き神の王』を煩(わずら)わせた時計仕掛けのオレンジ、蝉原勇吾」
今もなお『蝉原センキー』のままだが、
しかし、彼は、堂々と、蝉原勇吾を名乗った。
だからというわけではないけれど、その名乗りに応えるように、
センも、
「俺は究極超神の序列一位。今日、この瞬間だけは、貴様を終わらせるためだけに踊る月光の龍神。舞い散る閃光センエース」
言葉はすぐに世界へ熔けていった。
けれど、
想いは、蝉原の中で、永遠を思わせる輝きを放つ。
爆発しそうな心を胸に抱き、
蝉原勇吾は飛翔した。
出来る全てを賭して、
蝉原は、センエースと闘った。
もちろん、『戦い』になどなってはいなかった。
今のセンエースからすれば蝉原の駆除など児戯に等しい。
相手にならなかった。
あまりにも、今のセンエースは強すぎる。
数え切れないほどの絶望を背負って、
無限のイバラ道を突き進み、
決死の覚悟で、『今日』に辿り着いた神は、
当然だが、
――次元違いに、強すぎたんだ。
「君とここまで踊れるヤツが……他に何人いるかな、閃くん」
「さぁな……何人いるかは知らんけど……きっと、『ソンキー』なら、いつかまた、俺と踊れるようになるだろうな……」
センエースの、その発言を受けて、
蝉原は、一度、ソっと目を閉じて、
「…………うらやましいよ」
ボソっとそう言った蝉原に、
センエースは、穏やかな口調で、
「この強さに至った俺が?」
神の問いに触れて、
蝉原は、
「君に信頼されているソンキーが」
最後に、ニっと微笑んで、
「さて、閃くん。いい時間だし……そろそろ、フィナーレといこう」
「ああ、そうだな」
「――あっと、その前に、一言だけ言わせてほしいんだけど、いいかな?」
「好きにほざけよ」
了承を受けると、
蝉原は、コホンと息をついて、
「君は、俺なんかじゃ理解できないくらい……果てなく美しかったよ」
そう言うと、
召喚していた魔刀を、腰の鞘に納めて、
グっと体の至る個所を屈曲させて、ググっと力を溜める。
タメ時間は、ほんの数秒。
もちろん、『センエースとの闘い』という条件の前では、永遠を超える長い時間。
センエースがその気になれば、余裕で潰された。
けれど、センエースは見逃した。
当然。
――だって、
「――// 羅刹(らせつ)・真羅(しんら)・輪廻一閃(りんねいっせん) //――」
凶悪な威力の一閃が、
時空を裂きながら、
まっすぐに、センエースを襲った。
素晴らしい一撃だった。
圧倒的な存在値を器にした、強力な攻撃。
それは間違いない。
間違いない……が、
ハッキリ言って、
今のセンエースからすれば、
酷くチンケな技だった。
あえて、ガキのお遊戯と評してもいい。
遠い将来『花開く可能性』は極めて高いが、しかし、今はまだまだツボミ。
そんな、どうにも青くさい一撃。
だから、
センエースは、クッと、軽く踏み込んで、
居酒屋のノレンでもくぐるような気安さで、
蝉原の『ガン積みされた一閃』を払いのけると、
そのまま、
「……閃拳」
魂の正拳突きで、
蝉原の心臓をブチ抜いた。
キンッ……と、輝くような弾く音がして……
魂魄が鮮やかに飛び散って……
――世界だけではなく、蝉原の肉体に対してさえも『無駄な破壊』が起こらないよう、
もろもろに配慮しつつ、『エネルギーという概念』を完璧にコントロールした一発。
蝉原の腹部から拳を引き抜いた時、
センの腕には、血が一滴もついていなかった。
『究極超神技』としか言いようがない、完全で完璧な正拳突き。
「……」
残されたのは、胸の部分だけポッカリと穴が開いている蝉原。
蝉原は、自分の胸の穴をチラ見してから、
センと視線を合わせた。
「ふ……ふふっ……」
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