第1070話 カンファレンスコール!


「蝉原勇吾とP型センキーが合体して……蝉原センキーってところかな」


「ひねりがないな」


「ユウキーとかセミキーでも、別にいいんだけど……まあ、でも、今、この瞬間においては、俺が一番強く表に出ているから、出来れば、少し強めに、俺を主張しておきたかったんだ」


「……はっ。まあ、なんでもいいけどな」


 言ってから、

 センエースはゆったりと武を構える。


「遊んだ方がいいか? それとも、一瞬で消してやろうか?」


「いやいや、閃くん。せめて、少しくらいは遊んでおくれよ。せっかくの邂逅(かいこう)を無駄にするのはナンセンスだ」


「別に、お前を一瞬で消し飛ばす事をナンセンスだとは思わないが……まあ、いいさ。少しだけ遊んでやるから、好きなだけ絶望しろよ、蝉原」


 そう言うと、センエースは、武の構えをといて、

 完全なる『受け入れ態勢』を保持しつつ、

 ゆっくりとした歩調で、蝉原との距離をつめる。


 互いの距離が五メートルを切ったところで、

 蝉原は、トンっと後方に飛んで、スっと姿を消した。


 次元を渡り、

 距離という概念を殺し、

 そして、


(ははっ……油断したね、閃くん……)


 心の中で、ニィと真っ黒に笑い、


(ここまでの俺の態度は全部『ブラフ』……。俺はP型センキーの『気まぐれ』で『突然指名された』わけじゃない。――俺たちは、ここが到着点。禁止魔カードを使った『俺とP型センキーのシナジー』は、無粋な限界をはるかに超えるよう調節されている)


 全身全霊で、オーラと魔力を練り上げて、


(だから、君を殺すために、裏でしっかりと積んできた)


 溜めてきた全てを一気に開放し、


(……これは、最初で最後のチャンス……俺とP型センキーの全部を使って、君を、確実に殺すっっ!!)


 蝉原は、先ほどの会話で『心中』がバレないよう、

 表情・態度・言動、すべてに対し、限界まで気を使い、

 『蝉原は捨て駒だ』と思い込ませるようにした。

 すべては、センエースを殺すため。

 殺意すら殺して、

 慎重に、

 距離を奪い、

 そして!!




「イビルノイズ・カンファレンスコォオオオオオオオオルッッ!!!!!!!!」




 センの頭上を取ると、

 右手をセンに向けて詠唱。


 すると、

 センの周囲に、100を超える『BB弾サイズの黒い球』が出現し、

 ジカジカっと、音をたてながら発光した。


 歪な発光から、コンマ数秒後。


 その黒い球から、

 とんでもない魔力量と速度を誇るブラックレーザーが放出された。


 黒い光のカーテン。

 包み込まれたセンに逃げ場はない、

 ――はずだった、が、


「放出されるタイミングにズレがあるな。そのせいで、無数のアンチ(安全地帯)が出来ている。……難易度の低い弾幕ゲーだな」


 確かに安全地帯はあった。

 しかし、この弾幕ゲームの難易度は、決して低くなかった。

 というより、少し前までのセンなら余裕でマストダイ。


 圧倒的な力と邪悪さ、

 最強×最凶の掛け算でしか成しえない狂気の一手。


 ほんのわずかな一瞬で、ほんのわずかなスキマを見つけ、そこに、コンマ数秒の遅れもなく収まり続けなければ、無残に全身が貫かれてしまうレーザー地獄。


 その地獄を、


「ん? もう終わりか? 速度はそこそこだったが、持久力はイマイチだな」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る