第1051話 最終回カウントダウン1。『狂乱』
P型センキーは、
アイテムボックスから、一枚の魔カードを取り出して、
また少しだけ逡巡を見せたが、
「……毒を食らわば皿まで……禁止魔カード、使用許可要請」
そう言うと、先ほどと同じく、
――許可する――
という声が聞こえてから、
「――『はないちもんめ』――」
言いながら、禁止魔カードを破り捨てる。
すると、
P型センキーの体が、紫銀のオーラに包まれた。
自分が、奇妙な色のオーラに包まれたことを確認してから、
P型センキーは、
意識を失っているアダムの体を掴み、
「……いただきます」
そう言ってから、口を大きく開けた。
開いた口がメリメリと音をたてて広がっていき、
通常の口のサイズの十倍以上になったところで、
バグっと、アダムに食らいつく。
頭から、丸のみ。
何度か咀嚼してから、
ゴクンと飲み込んだ。
「ははは! きたきたぁ! いい! 溢れる! 戦闘力はカスだが、潜在能力はやはり、とんでもなく高い! 歪みにしかならない戦闘力の部分は排除して、とにかく、オーラだけを! アンリミテッドナイン(限りなく100%に近い純度)にまで圧縮して奪い取る!」
ブーーーン……
と、鈍く震動しているような音がして、
P型センキーの魂魄に変革が起きていく。
その間も、
センエースはピクリとも動かない。
ずっと、必死に、最大級の抵抗を続けているのだが、
どうしても、体が言う事を聞いてくれない!
焦りを抑え込み、
呪いに抵抗しながら、
必死になって、冷静に、
センエースは、
(まだだ! あの禁止魔カードとやらの性質はよくわからんが……しかし、見た感じ、奪われただけ! 死んではいない! サイケルの時と同じ、奪い返せば、再生は可能!)
焦って狂ってしまわぬように、
必死で自分を御しながら、
(問題は、アダムを奪われた事で、P型センキーの存在値が、さらに底上げされてしまったこと。……さ、さすがに、ここまで差が開いてしまうと、まともにやっていたら、絶対に勝てない)
先ほどまでなら、まだ、初見殺しの超必殺技オンパレードで押し切ることも不可能ではなかった。
しかし、アダムという、とてつもない可能性を奪われたことで、
『まともな戦いでの勝利』は不可能となってしまった。
(……どうする……どうすればいい……考えろ……)
超高速で回転する頭。
焼き切れんばかりの回転速度。
この瞬間に限っていえば、その加速値は、トウシの演算速度の全速を超えていた。
土壇場での爆発力において、センエースに勝る者はこの世に存在しない。
とはいえ、
(やべぇ……自力だと、どのルートでも、勝ち目がねぇ……こうなったら、俺も、ソンキーと合体して……)
と、最後の手段を模索してみるが、
(くっ、ダメだ……どうあがいても、第一アルファと接続できない……つぅか、領域外の『外』にコンタクトできねぇ……)
いまだ、センエースは、第一アルファに拒絶されたまま。
それどころか、そもそも外にアクセスできないし、
ゼノリカに救援要請を送ることも出来ない。
つまり、どうあがいても、ソンキーにSOSは送れないってこと。
(考えろ……どうすれば、この絶望を殺せる……対処が遅れれば遅れるほど、アダムを蘇生させる難易度が上がっていく……なるべく早く、P型センキーを殺す方法……どうすれば……っっ!!)
と、必死に頭を回しているセンの耳に、
「……セ……ン……」
シューリの声が届く。
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