第1050話 最終回カウントダウン2。『絶望』


 アダムとシューリは、

 即座に、『自分の現状』を正確に把握した。


 何やら、呪縛を受けたようにピクリとも動いていないセンエースと、

 そんなセンエースと対峙しているヤバげなオーラを放つ男。


 解説の言葉なんて必要はなかった。


 ――もちろん、この男が『P型センキー』という名の『危ない存在』であるなどという詳細を解したわけではない。


 詳しい事など、この状況でわかるはずがない。

 しかし、


 ――『センエースの敵』が、自分達を、ここまでさらってきた――


 その程度ならわかる。

 そして、そこまで理解できたら、もう充分だった。


 アダムとシューリは、

 『センエースの敵』――『P型センキー』を視認すると同時、


「ゴスペル・ソードスコール――」

「オーラドール・アバ――」


 迷わずに、

 最速で、

 最善の一手を打とうとして、


 ――しかし!!


「残念。お前らは、俺に遊んでもらえるほど強くない」


 一瞬で、二人の背後にまわったP型センキーは、

 感情のない言葉を並べながら、

 信じられないほど冷淡に、


「――がはっっ!!」

「――ぐふっっ!!」


 アダムとシューリ、

 両者の心臓を、背後から貫いた。


 その痛々しい光景を目の当たりにして、


「っっっっっ!!!」


 いまだ一歩も動けずにいるセンエースの血の気が引いた。


 今すぐにでも飛びだしたいのに、

 体が言う事を聞いてくれない。

 指先一つ動かす事ができない自分に対して、心底イラつく事しかできない。


 そんな、茹(ゆ)だった感情に溺れているセンエースに背を向けて、

 P型センキーは、とうとうと、


「シューリの方は、神呪をブチ込んだ『さっきの一撃』で充分だが……」


 そう言いながら、

 すでに超次再生がはじまっているアダムをロックオンし、


「……流石に、無限蘇生は、破壊することも、奪うこともできねぇ……が、しかし、これだけ存在値に差があれば、切り離すくらいは出来る……」


 言いながら、

 高速で複雑奇怪な手印を結び、


「――烈解――」


 左手は縦、右手は横――両手で十字を切りながら、そうつぶやくと、

 アダムの体が二つに分かれた。

 物理的に斬られて『まっぷたつ』になった――というワケではなく、

 片方は、アダムの原型をとどめているが、

 片方は、不定形で虹色のモヤモヤ。


 P型センキーは、

 流れの中で、

 その虹色のモヤモヤを指さし、


「――ベリオリズモス・プリズンスフィア――」


 そう魔法を唱えると、

 虹色のモヤモヤが、ギュっと圧縮されて、

 小さな虹色の球になった。


 ピンポン玉サイズの『虹色球』は、力なく、ポトンと地面に落ちて、

 二秒ほど、コロコロと転がっていたが、やがて、物理法則に従って停止した。


 P型センキーは、ヒョイと、その球を拾うと、


「うむ……やはり、どうあがいても、奪えそうにないな……まあ、別に無限蘇生とかいらんけど」


 そう言うと、その虹色球を、自分の額にあてた。

 ブツブツと、何かを念じると、

 虹色球が、ズブズブと、額に埋め込まれていき、

 ちょうど、半分埋まったところで停止した。


「さて、それでは、食事の時間をはじめよう……」


 そう言うと、


 P型センキーは、

 アイテムボックスから、一枚の魔カードを取り出して、


「……」


 また少しだけ逡巡を見せたが、


「……どうせ、すでに俺は無価値。毒を食らわば皿まで……禁止魔カード、使用許可要請」


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