第1025話 センエースをナメんじゃねぇ。


「何かしらの奇跡を起こして、もう一度耐えてみる? 別にそれでもいいよ。そしたら、続けて、3発目をブチ込むだけだから。つまり、お前は、どうあがいても終わりってこと。――最期に何か言いたいことはある?」


「はぁ……はぁ……」



 ボロボロ満身創痍のP型センエース2号は、

 無様にフラつきながら、肩で息をしつつ、


「……全部、想定外……何が悪かった? 俺は何のミスもしていないのに……なぜ、こうなった……」


「それ、俺に聞いてんの? それとも、いつもの、わけわかんない電波でサイコな独り言?」


(いや、原因は分かっている……センエースだ……あいつが全部わるい)


 ひどい目眩(めまい)がしている。

 激痛で頭が上手く回らない。

 吐き気がして、耳鳴りがして、脳が痙攣している。


 ハッキリと死にかけている。

 これは演出ではない。

 嘘偽りない。まっすぐな死に際。


(あいつの『影響力』が、フローチャートを台無しにした……完璧だった計画が全て穢(けが)された……)


 ギリっと奥歯をかみしめて、


(ここで、ゼンに殺されたら……ラスボス・プロジェクトが停止する……そ、それはダメだ!! そうだぁ! ダメなんだよぉぉっ! 最悪、あっけなく殺されるにしても……センエースを体験してからでないと、なんの意味もない! こんなところで終わるわけにはいかないんだよ……っ)


 頭では理解できているのだが、

 体が動かない。


「ダメなのに……ダメだ……ダメだって、こんなところで終わったら……わかってる、わかっているのに……くそ……わかっている……けど、ムリだ……心が……もたない……この絶望は……許容範囲外……俺では……むり……」


 ガクっと、ついには体を支えることすらできなくなって、地に膝をつく。


「さっきの異次元砲を耐えるのに、ほぼ全部を使ってしまった……オーラも魔力も、ほぼ完全に蒸発した……このインターフェイスはもうダメだ。捨てていくしかない……ってのに、現時点で利用可能な代替品は存在しない……詰んだ……」


 うなだれているP型センエース2号に、

 ゼッキは、


「……P型センエース2号……その名前の意味が、俺にはイマイチ理解できていない……だけど、もし、それが、『俺の名前』を模しているのだとしたら……」


 フンッ、と鼻で笑い、


「……手前味噌だが、言わせてもらう。『名前負け』にもホドがある。それとも、それだけ、俺がナメられているということなのかな? ……どっちにしろ不快だな。俺なら、さすがに、もう少しだけふんばる。他に何も持たない俺だが、根性とあきらめの悪さだけなら自信があるんだ」


 言ってから、

 さらに、もう一段階、両手に注ぐ魔力とオーラの量を増やす。






「……『センエース』をナメんじゃねぇ」






 最後にそう言って、

 ゼッキは、異次元砲を放った。


 迸(ほとばし)るエネルギーの乱舞。

 この一撃は強大。


 P型センエース2号は理解した。

 耐えられない。

 絶対に無理。


 ――時間が圧縮された。

 いわゆる走馬灯。


 死を前にして、全てがスローになる。





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