第1007話 P型センエース2号は、俺が引き継ぐ。


「P型センエース2号の情動調節はまだ完全ではない……というより、本物とはかなりのズレが生じている。本物であれば、仮にカルシィを心配していたとしても、それを直接口に出すことなどありえない……つまり、P型センエース2号は、まだまだ、センエースには成り切れていないということ。今のままでは、センエース特有の超覚醒など起こり得ない……ゼンにすら、勝てるか怪しい粗悪レプリカ……」


「P型センエース2号って……ランキングに乗っていた名前……ていうか、たぶん、俺のこと……いったい、どういう……おい、ボーレ……お前、何か知って――」


「しかたがない……ピーツは廃棄し、プランを大幅に変更する。……ちっ、面倒きわまりない……余計な手間をとらせやがって……」


「ボーレ! おい、いい加減に、俺の話を――」


 そこで、

 ボーレは、グンッっと勢いよく右腕を伸ばし、

 ピーツの口をガシっとふさぐ。


「っ?! ぅぐっ……っ!」


「もともと、出来が悪いとは思っていたが……それだけではなく、『根源的な運命力』まで低いとなると、ほとほと話にならない……まあ、しかし、収穫がなかったわけではない。貴様のおかげで、『センエース』という記号を与えるだけでは『駒にすらならない』という事がよくわかった」


「むぐ……ぐ……」


「理論上の最高値はもう狙えないな」


 悔しそうにそう呟いてから、


「……が、まあいいさ。俯瞰で見れば、実際のところ、たいした問題じゃない。大事なことは、数値ではなく結果だ」


 負け惜しみのようなセリフを吐いて、


「しかし……あらためて振り返ってみると……いろいろヒドいな。呆れてモノも言えない。あれだけ『お膳立て』してやったというのに、コスモゾーンから『(超極小)』しか認められなかった無能……使えないにもほどがある……」


「ぅぐ……っ」


「もういい……はなはだ遺憾だが……P型センエース2号は、私が――『俺』が引き継ぐ……テメェはもういらない」


「ぐっう!!」


 何が何だかさっぱりだが、

 しかし、このままだと殺されると理解したピーツは、

 全身に気合いを入れて、ボーレを睨みつける。

 すると、ピーツの気合いに呼応して、


「きゅいっ!!」


 携帯ドラゴンが出現し、

 迷いなく、ボーレに殴りかかった。


 膨らんだオーラが加速する。

 膨大なエネルギーが空気を裂く。


 この携帯ドラゴンは、センエースのデータを内包している、スーパースペック型。

 本来であれば、ボーレごとき、一撃で爆散していたはず。


 だが、


「当て馬のデータ体ふぜいが、粋がるなよ」


 ボーレは、携帯ドラゴンの攻撃など、屁でもない様子。

 ガシっ……

 と、あまっている左手で、なんなく携帯ドラゴンを掴むと、


「お前なんざ、所詮は、『本物』を開くための『キッカケの一つ』に過ぎない……『名前』すら持たない、哀れなイマジンコピー。『ハンパなレプリカ』ですらないチンケな虚構」


「きゅいっ! きゅいっ!」


 オーラを増幅させて、

 ボーレの手から逃げようとするが、


「お前ごときに意思はいらない……コアだけ残して砕け散れ」


 圧のある言葉に包まれて、


「きゅいぃいいいいい!!」


 ピーツの携帯ドラゴンは、

 ズガンッッッ

 と、無残に爆発した。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る