第993話 どっちが『かませ犬』?
「ははははははは!! 私が! 真に完成していく!」
「面白いな。ゴミみたいなカケラを回収しているだけだというのに、雪だるま式に存在値が膨れ上がっている……どういう理屈だ? 聞いてやるから、一説ぶってみろ、虫ケラ」
「もともと、私達は、『原初の個体』から別れたフラグメント! それぞれが、それぞれの『数パーセント』を保有している」
「なるほど。ようするに、お前らは、デフォルトで『合体すればするほど存在値が増すスペシャル』を持っているってことか、単純だな」
実際のところ、バグの内部では、複雑な存在値の計算式が用いられているし、
『無数のアリア・ギアスを積んでいる』が故に可能となっている特殊必殺技なのだが、
ソンキーの視点だと、そんなことは、どうでもいい。
戦闘バカのソンキーにとって大事なことは一つだけ。
「お前の『器』……いい感じに仕上がってきたじゃねぇか」
トントンと、その場で片足ジャンプをしながら、
「お前は、もはやオモチャじゃない。俺を殺しうる可能性を秘めた『俺の敵』だ」
「殺しうる可能性? ……いい加減、現状を理解したらどうだ? 私は真に完成した。今度こそ、本当の本当に完成した……私こそが、運命に準ずる真なる傷跡、究極超最終形態ネオグレートバグ。全てを終わらせる世界の影」
「いい虚仮(こけ)だ。俺を引き立たせる『かませ犬』として満点合格」
「かませ犬はそっちだ。貴様は、私に壊されて、奪われて、私の一部になる。そして、私は、より強大な傷跡となる」
「詠(うた)うねぇ、はしゃぐねぇ……」
ニィと微笑んでから、
「そのぐらい威勢がいいと、こっちのテンションも素直に上がる。さあ、もう舞台を整える時間は終わりだ。――終焉を始めよう」
そこで、
ソンキーは、大量の剣を召喚し、世界に配置する。
全ての剣に、これでもかとオーラと魔力を込めて、
「逃げ場を殺してやる。抗えない死を積み重ねてやるよ。その意味がわかるか? ……つまり、お前は死ぬ」
隙間なく、
認知空間を、『剣で描かれたジオメトリ』で埋め尽くし、
魔法を連鎖爆破させて、
限界なき火力の底上げをはかる。
究極の『バ火力』ビルド。
ソンキーという『戦闘バカ神』を丁寧に体現しているような、ド直球の脳死構成。
闘いの中で、極まった武の美を積み重ねるごとに、
ソンキーの神気はより深く練り上げられていく。
ただ強く、より強く、もっと強く。
その回転率のみに固執した強さを、
トウシという歯車が見事に料理する。
鮮やかに噛み合って、
昇華されていく。
ソンキーは美しかった。
凶悪な強さで、
見事な象(かたち)を魅せた。
ソンキーは何も間違えなかった。
トウシとのシナジーで、
完全なる闘神として、最果ての武を世界に魅せつけた。
――なのに、
「見えた!! 届く! この上なく美しき神ソンキー・ウルギ・アース! 私は、貴様を超えていける! 見ろ! これが私という個の極地! 世界を喰らい尽す、因果の最果て!! 全ての絶望を絶望させる、閃陰の終着点! アンリミテッド・トランスフォーム・モード【舞い散る閃光】!!」
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