第986話 極地。


 ウラスケの芯に、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、変革が起こる。

 革命のファンファーレが鳴りやまない。


 限界なんて興味ない、とばかりに、

 ウラスケのオーラが膨らみ続ける。


 まだ!

 まだまだ!

 いやいや、まだまだこんなもんじゃない!


 まだまだまだまだ、その程度じゃ、常識の範囲内!

 そんなものじゃないんだよ!

 この『非常識』は、もっと、もっとイカれている!


 もっとだ!

 もっと、もっと、もっと!!




「はははははは! マジか?! まだとまらないのか?! ははは! もういいよ! じゅうぶん、トウシを超えた! もう充分、ぼくは、全世界最強だ! え? まだ?! まだあがるのか?! ちょっと待て……おい、恐くなってきたぞ……ちょっとまて……おい、もう、ぼくの存在値5億を超えたぞ……5億だぞ……なのに、まだ……ウソだろ? 10億……25億……70億……おい、ちょっと、マジで、もういいって! こわい、こわい! はぁ?! ま、まだ……進化は始まったばかりだって……? ちょっ……ぇえ……ど、どこまで……」



 加速する。

 絶好調の宇宙みたいに、

 爆発的な速度で膨張していく。



「1兆……5兆……おい、ほんと、どこまで……」



 延々に上がっていく存在値。

 兆の領域を超えて、しかし、まだ止まらない。


「7兆……10兆……12兆……17兆っっ!!」


 旧カンストに到達。

 しかし、まだ、止まらない。

 膨らみ続けて、

 膨らみ続けて、

 ついには、


「もはや、測定できない……わからない……ぼくは……いったい、どこまできた……ここはどこだ……ぼくは……」


 天を仰ぎ、

 深い吐息とともに、

 そうつぶやくウラスケ。


 シンと空気が静かに平伏しており、

 命の輪が、恭(うやうや)しく、ウラスケを包みこむ。


「……おい、ウラスケ」

「……トウシ……悪いけど、少し静かにしてくれんか? 今は、ちょっと、自分を整理するんに忙しい」


 静寂の奥で、

 ウラスケは、ボソっと、


「は、ぁぁ……気分は、決して悪ぅない……しかし、爽快やない……なんというか……少しだけ、『本物の自重』が理解できた……そんな、不思議な気分……なぁ、トウシ……わかるか、ぼくの気持ち」


「……少しだけ」


「見栄をはるなよ。わかるワケがない。ぼくが辿り着いた世界は、あんたごときじゃ辿りつけない極致――」


 と、そこで、

 トウシは、目を閉じて、








「ショータイム」








 バトンタッチした。

 『彼の魂』の『奥』に眠る最強神とのクロスソウル。


 雰囲気が一転する。

 というか、見た目も変わった。

 ひねた中学生から、絶世のイケメンに変貌。



 深淵に潜む一等星のオーラ。

 厳かに凍てつく黒銀。



 その超絶イケメンは――ゆっくりと目を開けて、

 ウラスケを視認すると、

 ニィっと涼やかに微笑んで、






「……かつて、あのド変態に狩られた通過点――その進化系といったところか。くく……誇るがいい。お前は、俺を満たす養分として合格だ。この手で直々に殺してやる」






 膨大な練気を放っている彼を見て、

 ウラスケは、プルプルと小刻みに震えながら、


「……だ、だれや……おまえ……トウシやないな……」


 ウラウケの問いに、

 美しき神は、楚々として答える。


「俺は究極超神の序列『二位』。神界の深淵に巣食う宵闇。自縛を司る修羅にして、乱れ咲く銀の流星。彷徨(さまよ)う冒涜(ぼうとく)、ソンキー・ウルギ・アース」

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