第985話 バックドア。
「おお、流石にお前が表層に出てきたら、全然違うな。ええぞ、ウラスケ。強い、強い」
「どんっだけ、ぼくのこと、ナメてんだ、このクソヤロォォオオ!!」
「ナメとりゃせんよ。お前は天才や。その歳で、それだけ鋭く動けるやつは、そうそうおらん。いやぁ、すごい、すごい。頭が正常で、そんなに天才だなんて、ひゅう♪ さすが、ウラスケさんは格が違った。よっ、宇宙一」
「……このサイコテロリストがぁ……ぜ、絶対に殺したる……」
黒い怒りに支配されると、
ウラスケの存在値がグワっと上がった。
その姿を見て、
「やっぱり、煽り耐性が若干低くなっとるな。あきらかに洗脳を受けとる状態――」
「洗脳なんかされとらん! ぼくは! ぼくの意思で――」
「こんだけズバっと指摘されても、まだ、わずかも自分を省みてない時点で平静ではないやろ」
「……うるせぇ、うるせぇ、うるせぇ! 余計な言葉で、ぼくを汚すなぁ! ほんと、ムカつくんだよ、てめぇえええええ!!」
血走った目。
胸に刻まれた闇の亀裂がドクドクドクッッと強く脈動する。
ウラスケの頭の中が、どんどん黒く染まっていく。
怒りが積もっていく。
複雑なメモリが、歪に改竄されて、感情の制御が出来なくなる。
ウラスケの顔色が蒼黒くなる。
グチャグチャの逆上。
覚えのない怨嗟まで積み重なって、
心の奥で、陰鬱な雨が降る。
「はっ、はっ、はっ、はっ、はっ」
何周も回った激憤が、
ウラスケのギアを上げた。
集中力が、ドンドン高まっていく。
いつまでも深くへと潜れる。
集中力はカンストしていると思っていたが、
まったくそんなことはなかった。
いける。
まだまだいける。
「はっはっはっはっハッ――」
ある種の終着点に達したところで、
ウラスケは、
「見つけたぞ……バックドア……」
「……ん?」
「リンク完了。最適化まであと……三……二……一……ゼロ」
シンと、
ウラスケを中心に、世界が静かになった。
ピリっと、節度をわきまえない電流が先走った。
ニィ……
と、ウラスケは黒く笑う。
グググっと、魂魄の芯が盛り上がっていく。
「すっげ……なんや、このアホみたいなケタ違いっぷり……どれだけあるか見当もつかん」
「……何を言うとるんや、お前」
「くくく……ぼくも、よぉわからん……けど、ぼくと融合したことで、この『ネオバグ』は、正式に、『ネオグレートバグ』に進化できた……その結果、『どこか遠くの誰か』が稼いだ『異常な量の余剰経験値』を共有できるようになったんや……」
「……?」
「わからんか? わからんよなぁ……安心せぇ。ぼくも、たいして分かってへん」
言ってから、スっと深く息を吸って、
「タナカ・イス・トウシ……ここからのあんたは、ただ嘆いていればいい……あんたは、タナカ・イス・ウラスケという、『絶対に怒らしちゃいけないヤツ』を怒らせてしまった……だから、死ぬ。当然の話」
グググっと、
まだまだ膨れ上がる。
先ほどからずっと、止まらない。
ウラスケの芯に、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、変革が起こる。
革命のファンファーレが鳴りやまない。
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