第791話 問い。
『それでは問題!!』
「も、問題?」
『問いA、889998×278191は?』
「……はぁ?」
一瞬、困惑したが、
しかし、トウシの頭は、すぐに、
「ぇと……247589433618」
と、答えをはじき出す。
それを受けて、ゴーレムは言う。
『正解だ。素晴らしい』
「なんやねん、それ……なんで、急に掛け算……」
『あのゾルディックさん家のキルアくんでもお手上げの暗算試験をこうも見事にクリアするとは、やるじゃないか』
「……おどれ、おちょくっとんのか」
『問いB アマゾン川で――』
「ポロロッカ!」
『素晴らしい、正解だ』
「うっさいわ! おい、なんや、この、急にはじまった謎のクイズ大会!」
『問いC』
「もぉええわい! ほんま、何がしたいねん!」
『バンコクの正式名称は?』
「クルンテープ・マハーナコーン・アモーンラッタナコーシン・マヒンタラーユッタヤー・マハーディロック・ポップ・ノッパラット・ラーチャタニーブリーロム・ウドムラーチャニウェートマハーサターン・アモーンピマーン・アワターンサティット・サッカタッティヤウィサヌカムプラシット」
『そんなものを覚えているとは、貴様、ヒマ人だな』
「お前が答えろ言うたんやろぉが!」
そこで、ゴーレムは、
『問いD』
と言いながら、亜空間倉庫(アイテムボックス)からフリップを取りだした。
そこには、
【日本人のA男さんには子供がたくさん。11人以上は確実にいて、15人よりは少ない。男の子が7割で、女の子が3割。さて、子供は何人?】
と書かれていた。
それを見たトウシは、
「日本人」
そう答えると、
『素晴らしい、正解だ』
「……暗算やって、クイズやって、なぞなぞやって……なんや、これ、ユーチューブチャンネルか?」
『問いE』
「まだ続くんかい」
『この学校には、生徒の数が1000人。内、80%が男で、内20%が女。さて、この学校の校長先生は何歳でしょう?』
「わからない」
『その答えに辿り着いた理由は?』
「歳を割り出すための情報がない。もっと言えば、事前に、ひっかけのナゾナゾをやっとるから、これも『その類(たぐい)ちゃうか?』と悩ませたかったんやろうけど、ワシ、そういうのひっかからんから」
『実にすばらしい』
「で? まだ、このしょうもないお遊戯会は続くんか?」
『では、ラスト問題』
「おう、もう、ここまできたら、最後まで答えたらぁ」
『今から私は、貴様か、そっちの女、どちらかを殺す。助かるのは一人だけ。さて、どっちを選ぶ?』
「……」
『注意事項を一つだけ言っておく。沈黙は許さない。必ず、答えを出してもらう』
「……ふざけんな……どないせぇ言うんや」
『選べと言っている』
「どっちを選んでも正解やないやないか」
『それがどうした?』
「それがどうしたって……お前なぁ」
『いつから、正解のある問題しか出ないと錯覚していた?』
「……」
『貴様の命か、そっちの女の命……貴様は、どっちを選ぶ? 制限時間は、1分。カウントダウン開始。60……59……』
カウントダウンが始まった瞬間、
トウシは、
「ジュリア、走れ!」
迷わず叫びながら、ダッシュ。
その後ろをついてくるジュリア。
5秒ほどの全力ダッシュで、近くのビルに駆け込んだところで、
ジュリアが、トウシに、
「で、どうするの?」
「生き残る道を探す。ラスト問題だけ制限時間つきってことは、おそらく、『一分』以内に、あいつを倒せる何かがあるってことや」
「……『正解のある問題しか出ないワケじゃない』って言われたばかりじゃない」
「ワシが『錯覚しとるかどうか』と『正解のあるなし』はイコールにならへん。仮に、正解がなかったとしても、黙っとったら『ワシ』が殺されるだけ。せやったら、最後の最後まであがいたる」
「そうね。黙っていても、『あたし』が殺されるだけ……正解があろうとなかろうと、あがくしかない」
「こんなところで、『ワシ』は絶対に死にたぁない。ジュリア、手ぇかせ」
「……『あたし』は、この手であんたを殺すまでは死ねない。だから、手を貸しなさい」
「人の話を聞かんやっちゃなぁ。最悪、どっちか選ばないかんようになっても、ワシはワシを選ぶ言うとんねん」
「あんたの話なんて、まともに聞いたら耳が腐る」
「鬱陶しい女やわぁ……」
「あんたほどじゃない」
などと言い合いながらも、二人は、懸命に、何かないかと周囲を探索している。
その過程で、
「何か問題を見つけたわ。あたしじゃ分からない、さっさと解いて」
それは、大量の数字が並んでいる暗号文だった。
(RSA暗号……『ハンターハンターごっこ』や『ユーチューバーごっこをやってた』かと思ったら、今度はサマーウォーズごっこかい……てか、ペンも紙もなく、かつ暗算で解けって……ふざけとるな。普通にやったら、何十時間とかかる作業やぞ、クソが!)
などと、心の中で文句を言いながら、
眼球を開いて、鼻血を垂らしながら、
豪速で脳を回転させ、
ほんの20秒ほどで、
「――このビルの5階に……何かっ」
解答に辿り着くやいなや、
トウシは、全力で階段までダッシュし、
二段飛ばしで駆けあがっていく。
後ろからついてくるジュリアが、
「答えはなんだったの?!」
「知らん! 五階に『なんかがある』としか書いてなかった!」
全速で、息を切らしながら、階段を駆け上がるトウシ。
どうにか五階に辿り着くと、そこは、吹き抜けの広いフロアになっており、
中央に、
「はぁ、はぁ…………た、卵……?」
フワフワと宙に浮いている卵が2つあった。
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