第740話 氷山の一角を知るピーツ。


 龍試が終わった直後、カルシィたちと分かれたピーツは、

 先ほどの、古龍を撃退した地点まで戻っていた。


 どうやら、学校から支給されている例の魔石を、あの時のどさくさで落したようで、


(めんどくせぇなぁ……もぉ……)


 イライラしながら、落とした魔石を探しに戻ったピーツ。


 古龍と闘った地点から、少し離れたところで、


(お、あった、あった。よかったぁ、すぐ見つかって……これがないと、寮に帰れないって、どんなルールだよ、ったく……)


 魔石は簡単に発見できたのだが、

 そこで、


(……ん?)


 ピーツは、気配を感じて、身をひそめた。

 奥の方から声が聞こえてくる。

 ピーツが視線を向けてみると、






「この辺のはずなんだが……妙だな」






 猿顔の偉丈夫が、周囲をキョロキョロしながら、そう呟いた。

 すると、その隣にいるボーイッシュ&ゴシックな少女が、


「反応は完全にゼロ……やはり、計測器の間違い?」


 レミングウェイ・カティの発言を受けて、

 ブナッティ・バロールが言う。


「もしくは、周辺のエネルギー変動データを改竄されたか……」



 つい先ほど、このクア森林から『明らかに、この世界の常識から外れているエネルギー反応』を観測したゼノリカは、『D型の出現』である可能性を考え、天下に任せることなく、いきなり、九華を投入した。


 いつでも逃げられる準備&通信体制を整えて現場に向かったバロールとカティ。

 しかし、現場に到着すると、そこには何もなかった。


 そんなバロールとカティの様子を、木陰に隠れてソっと確認しているピーツ。

 気配を消しながら、ソっと息を殺して、バロールとカティを観測しつつ、


(な、なんだ……あの二人……)


 スマホ型のマジックアイテム『MDモバイル』を召喚し、携帯ドラゴンの強化と共に会得した『計測スキル』を用いて、二人の力を測ってみると、




 ――バロールもカティも『強大すぎて計測不能』という数値が出た。




 この計測器は有能で、古龍の事はもちろん、亜サイゾーの事も測ることはできた。

 『存在値1500』という『ケタ外れに神がかった圧倒的力』をも計測する事ができた『この計測器』を持ってしても『強大すぎて測定不能』という結果が出るという異常。


(強大すぎて計測不能って……も、もしかして、存在値5000とか……いや、もしかしたら、10000とかの可能性も……)


 体が震えた。


 デジタルに相手の数値が見えなくとも、状況証拠と空気感から、なんとかく理解できたのだ。

 あの二人はケタが違う。

 具体的には分からないが、なんとなく、

 『生命としての格とか次元』とかが『色々違う』と、

 『魂の芯』が『現状の絶対的な危機』を把握した。



 『あそこにヒソカが二人並んでいると考えろ』と言われた時のレオリオの気持ちが分かったような気がした。



 ビビり尽くしているピーツの視線の先で、

 カティが言う。


「計測されたエネルギー反応は、確か、存在値2000前後だっけ?」


「ああ、そのぐらいだな」


「神化が使えないなら、踏みつぶしておしまいだけど……もし、神化が使えたら……」


「脅威だな。というか、今の俺たちではどうにもならん。ミシャンド/ラ陛下ならどうにかなるだろうが……」


「私達も、ミシャンド/ラ陛下が辿りつかれた場所に……一刻もはやく辿り着く必要があるわね」


「超神……だったか? 神を超えた神……あの時のミシャンド/ラ陛下は、凄まじかった……自分があの領域に辿りつけるとは、現時点だと、まったく思えない」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る