第739話 義務。
「お前たちは全員、文句なく合格だ」
その発言を受けて、ボーレが歓喜の表情を浮かべ、
「マジでかああ! しゃああ! 龍試、突破ぁあ! いける! 学士とれる!」
と、喜びを叫んだ。
だが、その喜びは、
「お前たちは素晴らしい。というわけで、冒険者試験の二次に参加する『義務』を与える」
教師のそんな発言でピタっと止まる。
「義務? ……ん? どういうこと? 『権利』じゃなく義務?」
教師は続けて、
「分かりやすく言ってやろう。今回の龍試をクリアした者は、無条件で冒険者試験の二次を……『受けなければならない』んだよ。これは絶対的強制だ。頑として不参加の意思を示し続けるのも結構だが、しかし、その場合は容赦なく退学処分とする」
その発言を受けて、ピーツ以外の全員が、わかりやすく渋い顔をした。
ピーツからすれば、願ったりかなったりだが、
カルシィたちからすれば、冒険者試験など、冗談ではない面倒。
貴重な時間を『ただ潰すだけ』のウザイベントでしかない。
ボーレは、
「……ちっ、まあいいや……とりあえず、強制だっつぅなら、一応、参加はしてやる。そのかわり、テキトーに流して、さっさと落ちて――」
と、考えていた、
――が、
「ちなみに、二次でふがいない成績を出しても退学になるから、そのつもりで」
教師のその言葉で、ボーレは、愕然とする。
「ふ、ふざけんなよ、おい……二次くらいなら、ぶっちゃけ、よっぽどウゼェ試験じゃない限り、どうにか出来るだろうけど……だ、だりぃ……つぅか、退学連呼しすぎだろ。どんだけ辞めさせてぇんだ!」
★
教師からの『冒険者試験の強制参加命令』を受けた直後、
カルシィが、ピーツに、
「助かった。感謝する。君がいなければ死んでいた」
「……いや、俺がいるだけじゃダメだったんじゃないですかね。たまたま、奇跡的なアイテムが身近にあったってだけで……」
「それはもちろんそうだが、アイテムがあろうとなかろうと、それを使おうとするかどうかは、また違う話だ。君は、私達を囮にして逃げる事もできた。だが、君は、あれほどのアイテムを、迷いなく、私達を助けるために使おうとした。その事に感謝できないなら、私は人間をやめる」
「まあ、好きにしてくれていいんすけど……実際、マジで、感謝されるほどの事じゃないですよ。いくら、いいアイテムがあっても、使い道を間違えば意味がない。そういう意味でいえば、あの瞬間は、最高のタイミングだった。おかげで、個人的に最良の結果を得られた。……それだけです」
「君は、なんというか、アレだな……面倒臭い性格だな」
「お互い様だと思いますよ、わりと」
そう言って、二人は互いに笑った。
ひとしきり、笑顔をかわしあった後で、
カルシィが、
「……どうだ? 冒険者試験でもチームを組まないか?」
「俺、もう、特殊なアイテムとかないですけど?」
「二次『経験』者と、二次『突破』者では、この先の人生で得られる恩恵が段違いだ。命を救ってもらった礼として、君が三次まで進めるよう、少しだけ手助けをしてあげよう」
「……んー」
『めんどくせぇなぁ』とは思ったが、
『龍試での護衛』を『断り切れなかった』のと同様、
カルシィの愚直な好意を、どうしても無下(むげ)にはできなかったピーツは、
「じゃあ、まあ、はい……よろしくお願いします」
「ああ、よろしく」
と、そこで、
ボーレが、
「うんうん」
『長年連れ添ってきた親友ヅラ』で、ピーツの肩を抱き、
「古龍殺しチームで冒険者試験に挑むとなれば、二次突破は余裕だな。この五人で、頑張ろう! この五人は最強だ! 五人いれば、こわいものはなにもない! なによりも、五人っていうのがいい! 五人ってところがミソだ! この数字が素晴らしい! な! そうだろう?!」
またもやシレっと寄生しようとしているボーレ。
ピーツは、『うぜぇなぁ』とは思いながらも、
(まあ、でも、こいつがいなかったら、携帯ドラゴンを入手できなかったしな……)
と、思い、ボーレの事はテキトーに流す事にした。
(それに、こいつは、『信じられないくらいの狂気的なキ○ガイ』ってだけで、実力がないワケじゃないから、足でまといにもならないだろうし……)
こうして、古龍殺しチームで挑む事になった冒険者試験二次。
はたして、どうなる!
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