第735話 来世も――


「何をしている! さっさと消えろ!」


 その命令を受けたドコスとエーパは、


「いつまでも、どこまでもバカな女だ……」

「……本当に愚かしいお嬢様だこと」


 そう言ってから、

 互いに武器を抜いて、


「……俺の命も、ここで終わりか。バカな姫様につかされて死ぬだけの命……最悪の人生だったな」

「本当に、その通りね。愚かなお姫様の隣で死ぬだけの人生……最低だわ」


 言ってから、二人は、特に呼吸を揃えたというワケでもないのに、






「「できれば、来世も、同じ人生になりますように」」






 ピッタリと揃って、そうつぶやいてから、足に力を込めた。



「バカども! 何をしている! 来るなと言っている!」



 カルシィの叫びを無視して、ドコスとエーパの二人は、古龍に突撃する。

 迷いのない特攻。


「――貴様らの魂魄はいらんが、死にたいなら殺してやる。慈悲深い我に感謝しろ――」


 古龍は容赦なく二人に襲いかかった。

 圧力だけで殺せそうな、膨大極まりないオーラ。


「くっ……き、貴様の相手は私だ! よそみをするなぁあ!」


 大量の魔力を込めて剣を振るが、

 しかし、


「――流石に強いな。深き血を継ぐものよ。人という種の限界近くまで達している――」




 ※ 言うまでもありませんが、この古龍は情弱です。

   知能が低いわけではありませんが、

   基本的には『森の奥でずっと寝ている系ドラゴン』なので、

   あまり『世界』を知りません。

   ちなみに、勇者なら、普通に、この古龍を殺せます。




「――だが、貴様の攻撃など、しょせん、痛みを覚える程度でしかない。人の身で我に抗う事はできん――」


 さほどダメージは通っていない。

 あまりにも硬すぎる。

 火力も防御力もケタ違い。


 ドコスとエーパが、カルシィを全力サポートするのだが、

 勝てる見込みはまったくなかった。


 そんな状況を見ながら、

 ボーレが言う。



「エクストラチャンス……きただろ、コレ」



 不敵な笑みで、そう言った。

 そんなボーレに、ピーツが言う。


「……おいおい、先輩。状況、見えてるか?」


 ピーツの問いかけに対し、ボーレは、不敵な笑みを強めて、


「見えているさ。全部なぁ……言っておくがなぁ、後輩。俺は、この八年間、決して、遊んでいたワケじゃない。全力で、この学校を探索しまくっていたんだ。その過程で見つけたのが、あの『開かない扉』一つだけだと思うか?」


「……」


「コレは誰にも言わなかったが……実は、見つけたものは、もう一個だけあるんだよ。第七校舎の屋上で見つけた、とっておきの秘密兵器。使用できるのは一回こっきりの消費型アイテム……今まで、何度か実技試験で使いそうになったが、グっと我慢して温存してきた……すべては、この瞬間のため……『モンスター討伐系の一発型龍試』で……最大級の成果を出すため」


「……」


「見てろ、後輩。今から俺は、俺の人生で最も輝く!」


 そう言って、ボーレはふところから、一枚の魔カードを取りだした。


「ついに、使うぞ! さあ、ショータイムだ! 『トランスフォーム』!」


 叫びながら、魔カードを天高く掲げようとするボーレ。

 だが、そこで気付く。


「ん、あれ」


 懐から取り出したはずの魔カードが、気付けば手の中からなくなっていた。


「え、え?」


 周囲を探すと、


「お、おい、お前、なんで!」


 なぜか、ピーツの手の中にあった。


「こらこら、後輩! なんだ、お前、メイン職は手品師か! てか、どのタイミングで、ショータイムはじめてんだ! 今は俺の時間なんだよ!」


 ちなみに、タネ明かしをすると、ステルス状態の携帯ドラゴンがスルっとパクってきただけ。


「かえせ! それは俺のだ!」


「返してもいいけど、これ、多分、先輩じゃ使えないぞ」


「あん?」


(これ……携帯ドラゴン用の強化パーツだな……)


 携帯ドラゴンの孵化と同時に使えるようになった『スマホ型の魔法デバイス』を召喚してスキャンしてみた結果、


(……コレは……『仮面ラ○ダーみたいに、携帯ドラゴンを変身スーツ状態にして闘えるようになる』、いわゆる変身型の魔カード……)





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