第734話 学内ランキング2位『エリク』の悲鳴。
「逃げ足だ……人間の足音。おそらく、先に行った連中が引き返している音……かなり慌てている。めちゃくちゃ必死で逃げてやがる……」
渋い顔でそう言ったドコス。
そこで、エーパが、
「ねえ、お嬢……今日、参加している人の中には……確か、エリクさんもいたわよね」
その問いに、カルシィが答える。
「ああ」
カルシィは、渋い顔になって、
「ドコス……『エリク』も、その逃走グループに入っているか?」
エリクは、学内順位2位の実力者。
戦闘特化でおそろしく強い。
汎用型の魔法使いタイプで、広域殲滅も一点集中も得意という万能魔法使い。
存在値30級のモンスターが群れで現れても瞬殺できる超人。
「……ああ。あいつの足音は特徴的だから間違えない。あいつも逃げてきている。というか、近い」
と、そこで、森の向こうから、
「ひぃいい!」
真っ青な顔で悲鳴をあげながら、こちらまで駆け抜けてくる青年の姿が見えた。
青いローブを纏っている高身長の男。
そんな彼の姿を目視したカルシィは、
「エリク! どうした? 何があった!」
「に、逃げろ、逃げろ! 死ぬぞぉ!」
「なにがあったかと聞いている!」
「古龍が出やがった! 勝てるか、あんなもん!」
そう叫び、ダダダァっと走り去っていくエリク。
「カルシィ、逃げるぞ!」
「お嬢! 逃げるわよ!」
カルシィの命が最優先の二人が、カルシィにそう叫んだ。
「そうだな。流石に古龍は相手にできない。すぐに逃げ――」
逃走する決断を下した、ちょうと、その時、
「――他は逃がしても、貴様は逃がさない――」
上から、気品がある龍が降ってきて、そう言った。
サイズ的には『二階建ての一軒家くらい』で、超巨大サイズという程でもないが、その気品とオーラは半端なかった。
カルシィは、一度、フーマーの海域を守護している『エンシェント・リバイアサン』をその目で見た事があるが、目の前の古龍からは、それ以上の圧力を感じた。
古龍は、カルシィを睨みつけ、
「――そこの娘……貴様、『東方』の『深き血』を継いでいるな――」
「……」
「――目覚めの食事に相応しい。貴様を殺し、その魂魄を奪わせてもらう――」
ヨダレを垂らしながらそう言うと、全身の魔力を高めた。
強大な魔力にあてられて、
カルシィは、
「っ! ……剣気ランク5!!」
反射的に、戦闘態勢をとった。
全身のオーラを膨らませ、必死になって、古龍の覇気に耐える。
「――人の身で、龍種のエンシェントである我に勝てると思うか――」
古龍はそう言うと、翼を広げて、フワっと飛びあがり、
グンっと体重を乗せ、カルシィめがけて急降下してきた。
まるで、ライダーキック。
左足にオーラを込めて空から突撃。
凄まじい速度と圧力。
ギリギリのところで回避するカルシィ。
だが、風圧で体勢を崩され、そこに、長いシッポが、ムチのように、
「がぁあ!」
バシィンっとカルシィの全身を打ちつける。
大量の血を吐くカルシィ。
鮮血が舞って、骨が砕ける。
「カルシィ!」
ドコスが叫び、その後ろで、エーパが真っ青な顔で気絶寸前の顔をしている。
一瞬、頭が真っ白になりかけた二人。
すぐに自分を取り戻し、カルシィの救出に向かおうとするが、
それを、
「くるなぁ!」
カルシィは大声で制する。
カルシィの命令でピタっと立ち止まる二人。
そんな二人に、カルシィは、
「私の獲物だ……邪魔するな……」
フラつきながら、立ち上がって、
「お前たち、全員、この場から消えろ。こいつを狩るのは私の特権。誰にも譲らない」
スゥっと息を吸って、
「何をしている! さっさと消えろ!」
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