第714話 『秘密の部屋』へと続く道。


「誰かに言いたくて仕方なかったが、しかし、誰も相手にしてくれないから、俺に話すしかなかったと……」

「理解力があるじゃないか。賢い、賢い」


「……お前よりは賢いだろうな。なんの自慢にもならんが。というか、お前、よく、この大学園に合格できたな」

「学校に入る前は、全ての時間を勉強に使っていたからな! 入試はぶっちゃけ余裕だった! 普通に九割以上は取れた!」


「入学後もそうしていれば……というか、そうだよな。一日に八時間も勉強以外のことにあてていたのに、今も、『ギリギリ、学士号を取れるか取れないか』っていう位置にはいるんだから……たぶん、資質は高いんだろう……なんて、もったいないおバカさんなんだ……」



 ★



 あのあと、いろいろ、なんだかんだあって、

 結局、ピーツは、


(もし、本当に、そこに凄い宝とかがあって、それが今の状況を一変できるようなスーパーアイテムだったら……まあ、ないとは思うが、絶対にないワケでもない以上……挑戦するのもアリかもしれない……)


 ボーレに誘われるまま、

 『秘密の部屋』の入り口へと向かった。


「ここに地下への隠し扉があるんだ」


 言われて到着したのは、第十七校舎の一階にある多目的室だった。

 ボーレに言われた通り、重たい教壇をどかしてみると、

 そこには、地下へと続く穴があいてあった。

 それなりに深く、鉄のハシゴが設置されていた。


「こんな場所、よくみつけたな」

「この八年間、色々なところを押したり引いたり踏んだり開けたりしていたからな」

「……」

「俺の見立てでは図書館が一番怪しかったから、2年くらい、図書館にこもって、棚の位置をズラしてみたり、本の背表紙を押してみたりと、ひたすらに色々とやったんだよ。ビックリするくらい、何もなかったけど」

「に、2年も……そんな無意味なことを」

「実際、図書館に使った時間は無意味だったなぁ。いやぁ、しかし、まさか、こんな、なんの変哲もない校舎に秘密があったとは……」


 言いながら、地下へと降りていくボーレ。

 たっぷりとした下腹部をどうにか押し込めて下へとおりていく。


 一番下まで降りると、光の魔法がかけられた通路があった。

 10メートルほど続いているその通路を抜けると、

 そこには、体育館くらいの広い空間があって、その奥には、



「……なんだ、あの扉……」



 『禁域の扉』と似たようなフォルムの扉があった。

 もちろん、ピーツは、その扉が『禁域にあるものと似ている』などとは思わない。


「あの奥にはきっと、金銀財宝がたくさんあるぞ……」


 目をキラキラさせてそんな事をいうボーレ。

 それを横目に、


(金銀財宝はいらんなぁ……なにか、すごいマジックアイテムとかが欲しい。……贅沢を言わせてもらえるなら、『経験値に倍率がかかるアイテム』とかがいいな……もし、そんなアイテムが手に入ったら、そのへんにいるスライムを何百、何千、何万、何千万と、とにかく狩りまくってレベルをガンガン上げて……)


 などと妄想していると、

 ボーレがトテトテと扉に近づき、


「さぁて、この扉はどうやったら開くのかなぁ……」


 まずは、押したり引いたりしてみた。

 だが、何も起こらない。

 そこで、ボーレは、扉の周囲を探しだす。


 ピーツも、それに続いて、色々と探してみた。

 すると、

 ほんの十数秒の探索で、ボーレが、


「おい、ピーツ。みつけたぞ。ボタンを押したら、文字盤が出てきた」


 そこまでは歓喜の声に包まれていたが、


「あ、でも……ぜんぜん知らん言葉だ!」


 すぐさま絶望の声に変わった。


「その上、複雑すぎる! これだけ、色々な形態で書かれているということは、きっと、おそろしく難しい暗号だ! 俺にとけるわけねぇ! どうしよう! 詰んだぁあああ!」


 頭を抱えて嘆くボーレ。

 そんなボーレの横から、どれどれと文字盤を覗きこむピーツ。




 その文字盤には、こう書かれていた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 1 :仕様書不明さん :00/00/00 00:17

  ∧__∧ **  

 ( ´∀`)< ぬるぽ


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る