第696話 俺を相手にする時は、
「俺の推測だと、おそらく、あと、2000回ほど俺に殺されれば、お前は、今の俺の領域まで辿りつける」
「……」
「そこまで持つか? 持たないだろ? これも推測だが、おそらく、お前は、あと7回ほど死ねば枯渇する」
「……」
「おそらく、お前は、データ・数値だけを見て、俺との戦闘予測をたてたんだろ? 『センエースは、この数値』だから『これだけやれば勝てる』という机上の空論だけを頼りにして、今、お前は俺の前に立っている。違うか?」
「……」
「お前に一つ、大事な教訓を与えてやろう」
そこで、センエースは、コホンとセキをして、
「俺を相手にする時は、何も想定するな。無駄だから」
「……」
「さて、それじゃあ、続きといこうか。ぶっちゃけ、俺の推測が外れていて、お前が俺を超えてしまうという可能性もない事はないんだが……まあ、それならそれでも別にいい。結果は変わらない。俺より強い程度のザコに、俺は負けないから」
「……」
「おいおい、どうした? さっきから、ずいぶん無口になったな。それにしても、これじゃあちっとも面白くない。もっと本気でやってほしいな。それとも、本気でやってこのザマだったかな?」
無敵のセリフを並べてから、センは続けて、
「別に、恐い先生の授業中ってワケじゃないんだから、楽しくお喋りしたっていいんだぜ? どころか、奇声をあげて暴れまわる事だって許してやるさ。俺は心が広いんだ。というわけで、そろそろかかってこいよ。授業の締めとして、ここからは、終わり方を教えてやる」
そこで、
P型センエース1号は、
「……は、はは……」
乾いた笑い声をあげてから、目に見えて脱力し、
「に……2000回か……そうか……さ、最初から絶対に無理だったのか……」
そうつぶやくと、
「こ、超えられると……思った……頑張れば、諦めなければ……けど……ぜんぶ……勘違いでしか……なかった……」
力なく、
うなだれながら、
そう言った。
――そして、
だから、
「結局……」
死んだような目になって、
ボソっと、
「やるしか……ねぇのか……ちくしょう」
「あん?」
センの疑問をシカトして、
P1は、スゥっと息をすった。
深呼吸。
フラットで、一本調子で、
とんと感情の見えない、
そんな声音で、
「コスモゾーンよ、『無限転生・改』を含めた、俺の全てを捧げる」
どこまでも無感情のまま、
「だから、五分間……俺を解放しろ」
たんたんとそうつぶやいた瞬間、P1の体が赤いオーラに包まれる。
それを見たセンは、
「そんな事務的に絶死のアリア・ギアスを積む奴は初めて見たぜ」
そんなセンの感想を受けて、
P型センエース1号は、
湧き上がる力に、わずかも興奮を覚えている様子はなく、
ただただフラットなまま、
「……最初から、この予定だったからな。事務的にもなるさ」
ボソっと、力なくそう呟いた。
センは、
「ふぅん」
と、穏やかに、そう言いながら、
「ぶっちゃけ、五分だったら、『防御を固める』か『逃げ回るだけ』でも完封できる。そのどちらかがベストな処理方法だと理解している。けど……」
センは構える。
そして、P型センエース1号とは違い、熱のこもった声で言う。
「真っ向から相手をしてやる。その理由が分かるか?」
「……知らん……」
「ブチギレてるからだよ……もう少し冷静でいられると思っていた……冷静でいようと努めてきた……お前という敵が『想定していたよりもカス』だったから、どうにか、ここまでは冷静でいられた……けど、こうなった以上、我慢はできない……よくも俺の家族を傷つけやがったな……」
「我慢しようがしまいが無意味だ……お前じゃ俺は殺せない……」
「さあ、どうかな」
「わかるさ。究極超神化6では、俺は超えられない」
「なら、その先をいってやるさ」
「……は?」
「いつまでも、同じ場所で足踏みはしない。見せてやるよ。俺がたどり着いた、次の世界を……」
そこで、センは、目を閉じて、
グっと全身に力を込め、
静かに息を吐き切ってから、
カっと目を開き、
「――/\**【真・究極超神化6】**\/――」
オーラを解放する。
センの覇気は、限界を超えて、嵐のように、膨れ上がった。
光の粒が暴風になって世界に散布される。
壁を超えた先の次元をお披露目。
カンストの向こう側を見せつける。
――その輝きは、留まることを忘れた波となって空間を覆い尽くす。
それを見たP1は、ボソっと、
「そ、それがカンストを超えた姿……お前の……真の本気か? はは……なるほど……とっくに、限界を超えていたか……本当に、お前は凄まじい……確かに、素の力でお前を殺そうとすれば……最低でも、2000回は死ぬ必要があるな……」
P1の視線の先で、まだなお、センのオーラは膨らみ続けていた。
解放されたセンを見ていた誰かが言う。
ゼノリカの誰かが、ボソっと、
「……あぁ……なんと……っ」
感嘆符をこぼす事しか出来ない。
装飾された言葉なんて出てこない。
あまりに荘厳すぎて、ただ圧倒される。
心が痺れていた。
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