第694話 アキレスとカメ。


 センとの闘いで、P型センエース1号は、どんどん強くなっていった。

 信じられない速度で、どんどんセンに追いついていくP1。


「俺の強さは、次第にお前においついて――ぐぼへっ」


 しかし、アッサリと殺されるP1。

 強くなっても、強くなっても、強くなっても、

 P1は、センに殺される。



「ぶはっ!」



 また、すぐに蘇り、


「む、無駄なんだよぉ! 無限転生の恐ろしさは、誰よりもお前がよくわかっているだろう! 無限転生をなくしたお前は死ねば終わる! だが、強化版の無限転生を持っている俺は、死んでも、この場で転生できる! お前は俺には絶対に勝てない! 無限の命を持つに等しい俺に勝てる者はいない!」


「その割には、死なないように立ちまわっているな。もし、俺が、永遠に死なない力を持っていたら、そこまで慎重に行動はしない」


「俺はお前とは違うんだよぉ!」


「センエースになるって言ってなかったっけ?」


「お前のモノマネをすると言っているんじゃない! センエースという『核』を俺のものにすると言っているんだ! 俺がセンエースの核を得れば、俺は、お前以上のセンエースになれる!」


 叫び、P1は、センエースに襲いかかる。

 オーラを練り上げて、



「俺は、P型センエース1号! センエースを超える、真のセンエースだぁ!」



 強大な一撃を放つ。

 膨大なエネルギーの奔流。

 空間をねじり切るような、激烈極まりない、超高密度の暴力。


 ――それを、

 センエースは、あっさりと回避し、

 サクっとカウンターを決めた。


「ぐぁあああああ!!」


 それにより、P1はサクっと死んだが、


「ぶはぁ!! くぅ!」


 ――またすぐに蘇る。



「さ、流石に強い! 圧倒的だ! しかし、関係ない! お前がいかに無敵の力を持っていようと、永遠に蘇り続け、永遠に強くなり続ける俺には勝てない!」


 P1の戦闘力は、徐々にセンエースに近づいていく。

 何度殺されても、P1は蘇り、そのたびに強くなって、センエースに襲いかかる。

 何度も、何度も、

 何度も!


 ――その結果、



「どうだ! センエース! 近づいてきたぞ! そろそろ俺はお前の横に並ぶ!」



 その発言を受けて、センエースは言う。


「そうだな。そろそろだな」


「ここまでくれば、もう、簡単には殺せないぞ! 抗って抗って抗って、そして、俺はお前を超える! 俺がセンエースにな――ぶふっ」


 踏み込まれ、あっさりと殺されるP1。

 はじけ飛ぶ頭部。

 ついでに心臓もふっとばされた。

 あまりに一瞬の出来事だった。

 あまりに一瞬すぎたせいか、P1の核は、『己の死』を一瞬、見失った。

 少々のタイムラグを経て、P1は蘇る。



「くっ……ま、まだ、足りないのか……というか、まだ、かなり遠い……近づいて見えたのは、錯覚か? ちっ……ぬぅ……だ、だが、すぐに追いついて――ぶっ」



 また殺される。

 至極、あっさりと、

 蘇ったP1は、


「つ、強いな、センエース! それでいい! その『強さ』を『超えた自分』を想像するだけで、俺は――うぼほぉおおおおおおっ」


 また殺される。

 先ほどよりも容易く。

 よりはやく。

 より鋭く。


 P1は、センに殺される。

 いつまでも、どこまでも、あっさりと。

 まるで、必然のように、P1は、センに殺されつづける。


 その結果、流石に、P1も、



「――ま、待て待て! タイムだ! タイム!」



 タイムをかけた。

 その必死の要請を受けて、律義に動きを止めるセン。

 本気で相手をしていない証拠。

 遊んでいる証。


 そんなセンエースの呑気さに怒りを覚える余裕などなく、

 P型センエース1号はセンに尋ねる。


「ど、どういう事だ……この状況はなんだ……俺は、お前に近づいたはずだ……なのに、なぜ、お前は、ずっと遠いんだ……なんだ、この矛盾! 意味が分からない!」


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