第693話 『P型センエース1号』VS『究極超神センエース』



 センエースの波動で、絶望的だった空気が、木っ端みじんに蹴散らされた。


 閉鎖空間内に囚われている百済の面々もふくめ、

 この場にいる全員が、ポカンと口を開いて、

 ただただ、センエースの威光に愕然としていた。


 シューリやアダムの波動もケタ違いだったが、

 センのソレは、彼女達とは『また違う次元』に達していた。


 理解できる範囲ではなかった。

 認知の領域外にある超次概念。


 だが、分かることもあった。

 このポカポカとした温かさ。

 フツフツと湧き上がる敬愛。

 留まることを知らない崇敬。

 魂魄の中核で形になる景仰。


 深く、遠く、激しく、

 なのに、優しく寄りそってくれる、

 柔らかく包み込んでくれる、

 この途方もない輝き。


 この尊さこそが、真の――




「調子に乗るなよ、センエース。主役はお前じゃない。俺なんだよ」




 尊さの熱気で世界が満たされようとするのを、

 P型センエース1号は、無粋な発言でもって阻止する。


 ――『P型センエース1号』は『究極超神センエース』に対して、

 手負いの獣のように、ギラリと光る歯をむき出しにして、


「お前を奪う準備は万端だ。お前の伝説は終わる。今日、ここで終焉を迎える。そして、俺がセンエースになる。ここからは、俺の物語がはじまる」


「へぇ、すごいね」


 P型センエース1号の宣誓を、サラっと流すセンエース。

 空気が淀む。

 混濁して緩む。


 P型センエース1号は、肩を震わせて、


「ナメやがって……俺(センエース)を教えてやる!」


 そう叫び、センに飛びかかった。

 拳に込めたオーラは甚大。

 練り上げた魔力も膨大。

 豪速。

 圧倒的な力。

 既に、究極超神の領域に辿り着いている狂気のパワー。


 ――それを、


「シューリは、天才なんだが、『強くなろう』って気がまったくないからなぁ……」


 センは、呑気に、ボソボソと、


「もし、あいつが、弟と同じくらい、本気で強さを求めていれば、お前ごときには、絶対に負けなかっただろうに……」



 惚れた女に対する文句を垂れ流しながら、ゆったりと、

 P型センエース1号の攻撃をさばいていく。



「くぅ……やっぱり、強いな、センエース! お前の武は、遥か先を行っている! だが、届かないほどじゃねぇえええ!」


「おっ、ちょっと強くなったな……すげぇ成長率……羨ましいねぇ。俺も、そのぐらいの速度で戦闘力が上がったら苦労しなかったんだが」


 やれやれと首をふりながら、

 いまだに、ゆったりとしたまま、

 のんびりとコーヒーでも飲んでいるかのような呑気さでP1と対峙するセン。


「そんな余裕面してられんのも今のうちだ! すぐに――うぼげっ――」


「ん? 何か言った? つい殺しちゃったから、聞こえなかった。もう一回、言ってくれる?」


 あっさりと殺され、

 しかし、


「ぶはっ!」


 すぐに蘇ったP1は、


「……ぎっ!」


 力強く奥歯をかみしめ、血走った目でセンを睨み、


「ふん! すぐに追いついてやるよ! そして、飲み込んでやる! お前は、俺に全てを奪われる!」


「へ~」


 呑気を貫くセンに、

 P1は、さらに熱く闘志を燃やして、

 大量のオーラが注がれた拳をブンブンとふりまわす。

 その『速度』と『鋭さ』は、常に右肩上がりで伸びていく!


「どうだ! また俺は強くなったぞ! 流石に焦ってきたんじゃないか?!」


 拳を振り回す速度をさらに上昇させながら、

 P型センエース1号は叫ぶ。



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