第691話 ブースター。


 究極完全体モードのアダムの存在値はケタ違いで、

 P型センエース1号を遥かに凌駕していた。


 膨大な『数字の力』でP型センエース1号を抑え込もうとするアダム。

 シューリもそれに続く。


 『膨大なオーラを纏った二人の女神』を相手に、『独り』で奮闘するP型センエース。



「圧倒的『2』対『1』! 絶対的孤独! ああ! これでいい! ココこそが、俺の世界だ! 俺は――うがぁあああああ!」



 奮闘むなしく、P型センエース1号は圧殺された。

 あまりにも強大な二つの力を前に、容易く、ひねりつぶされた。


 間違いなく死んだ。

 だが、蘇る!

 何度でも蘇る!



「膨大! 極大! 目眩がする! それでいい! この絶望は、つまり! この局面を乗り越えた先に、『完成した俺』が待っているってこと! センエースに抗える器が完成するということだぁ! さあ、最後の最後まで! とことんまで付き合ってもらうぞぉおお!」


「ちっ……まだ蘇るのか」

「クソ鬱陶しいでちゅねぇ」


 辟易した顔をしている二柱の女神。 


 戦闘はさらに激化した。

 P型センエース1号は、さらに強くなる。


 暴力の渦は留まる事を知らない!

 ただひたすらに膨張していく!



 ――その途中で、P型センエース1号は気付く。


(ん……アポロギスの野郎……妙にトロくねぇか……)


 膨大なオーラの意識が向き過ぎていて、

 今までは気付いていなかったが、

 アダムの動きは、シューリと比べて、かなり鈍い。


(存在値がムダに高いだけで、戦闘力は低い……手を抜いているのか? いや、この状況でそんなわけ……ぁっ)


 と、そこで、ハっとするP型センエース1号。


(そ、そうか、こいつ、戦闘力を生贄にして転生したなっ)


 正解だった。

 ドンピシャの大正解。


(……現闘力はそこそこだが、神闘は、シューリの足下にも及ばないレベル……こいつは、『ただ数字が膨れ上がっただけ』のハンパなバケモノ。『なぜ、こいつのデータがなかったのか』についてはいまだに不明だが……もう、そんな事はどうでもいい。この女が、さほど脅威ではないという事実だけが現状の全て! これなら、余裕で対処できる! アダム……この女は、『想定外のイレギュラー』で『不明事態の最大要因』と、面倒な要素のオンパレードだったが……しかし、それ以上の面倒事ではなかった!)


 アダムも参戦し、

 『2』VS『1』という圧倒的有利対面を形成していながら、

 しかし、戦況はかんばしくなかった。


「むしろ! てめぇの追加で、より効率良く俺は磨かれる! てめぇの、その『シューリの力不足をカバーする、圧倒的なパワー』は、俺を輝かせる最高のブースター!」


 積み重なった絶望の全てを超越して、

 P型センエース1号は強大になっていく。


 どんどん、どんどん、巨大な存在になっていくP型センエース1号。


 シューリの攻撃を次第に見切っていく。

 アダムをあしらえるようになっていく。


 回避できる頻度が上がり、Pセンエース1号の攻撃が当たる回数が増えていく。


「くく……ここまできたら……あとは、学んだ武を血肉化させるだけだな」


 P型センエース1号は、学んだ全てを自分の中に刻みつけようとする。

 湯水のように、己の死を糧にして、

 自分を完成させようとするP型センエース1号。


 次第に、シューリとアダムの二人同時でも殺せなくなっていくP1。


 ――流石のシューリも心底疲れた顔で、


「マジで、ほんと、いったい、なんど蘇れば気がすむんでちゅかっ!」


 闘いの途中にも関わらず、つい、苦々しさを隠しきれていない声音でそう叫んでしまった。

 もはや余裕は微塵もなかった。


 P型センエース1号は強くなりすぎた。




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