第570話 ミルス王国のモナルッポ。
ミルス王国の王都にある王城は、外観はそこそこ立派だが、中身はスカスカのハリボテのような城だった。
本当に何もないハリボテという訳ではないが、玉座も調度品も宝物殿の中身も、外観の立派な感じには全くつりあっていない。
『それ』は、ミルスの気質とも言えた。
ミルス王国のような、『セファイルよりは流石に大きい程度』の小国の説明に時間を割く気はないので、『この国で最も重要な人物』に『少しだけ焦点をあてるだけ』にとどめて先に進もうと思う。
(……ランク5の量産……だと……)
ミルス王国の第三王子『モナルッポ』は、何も身につけていない完全全裸のまま、ベッドの上で、セファイルに忍ばせている間者からの書簡に目を通しながら、
(……これがキッツ以外からの報告だったら、鼻で笑って一蹴しているところだな……)
心の中でそうつぶやいた。
そんな彼に、しなだりかかる女が一人。
「なに読んでるのぉ、王子ぃ」
モナルッポが飼っている低位貴族の娘(側室ほどでもない『遊び相手』という形で、何人か飼っている。周囲の貴族は、モナルッポに娘を贈っても、貴族的な意味であまり旨味はないと理解している。だから、『モナルッポくらいしか相手してくれない』というレベルの貴族家の女しか飼えない)。
この『オモチャ7号』――『カリネ』は、見た目はそこそこ派手で、かつ『モナルッポのバカさ加減』が『きちんと理解できる』ていどの知性はある、モナルッポ的には非常に都合がいい女。
「さっき、兄貴の忍が持ってきたセファイルの報告書。一応、俺も見ておけってさ」
その忍『キッツ』は、モナルッポの本性を知っている数少ない者で、一応、表向きには、王族つきで、メインで『従っているとみせかけている』のは、父や兄二人だが、その忠誠心は、完全にモナルッポただ一人に向いている。
※ ちなみに、キッツとモナルッポのエピソードも結構なボリュームで、かつ、まあまあ面白いのだが、話が進まないので、オールスルーだドン!
「……なんか、セファイルで革新的な技術が見つかったとか何とか……」
「革新的な技術って?」
「俺に聞くな。よくわからん。なんか、セファイルの企業の一つが、ランク5の魔カードを量産できるようになったとか、どうとか」
「ランク5?! それもセファイルが?!」
「うるさ……なんだよ、どうかしたのか?」
「いやいや、王子! 魔カードってランク2で高級品なんですよ?!」
これまでは、量産販売できるものの中で最高品質は『ランク2』だった。
特別な素材や技術を使うことで、最高『ランク9』という魔カードを創ることもできたが、それは、あくまでも、特別な資質を持つ破格の超天才が、異次元の技術と膨大な魔力をぶちこんだ際の話。
『ピカソの最高傑作(ランク9)』と『最高級和紙(ランク2)』の差と言えば、少しはご理解いただけるだろうか。
ランク5とは、その間にあるクオリティ。
そんなものを量産できるようになったとは、いったい――
「へぇ。で?」
「で、って……ランク1の魔カードと、ランク2の魔カードって、性能が段違いなんです! となれば、ランク2とランク5の性能の違いも当然、とんでもなく大きい!」
「……だから?」
(この男、本当にバカね……本当に冒険者試験受かっているの?)
呆れて溜息をつくカリネ。
そんなカリネの表情を見て、バレないよう、密かにほくそえむモナルッポ。
ちなみに、モナルッポの、『表向き』の存在値は30ちょっと。
王族としては低い方だが、冒険者試験には、『試験内容が簡単な年で、かつ運が良ければ、ギリギリ受からなくもない』というレベルではある。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます