第470話 『ニー』+『セイラ』
ヘルズ覇鬼のセイラに対する猛攻に対し、必死に最善手を探すハルス。
だが、ハルスよりも存在値がかなり高いヘルズ覇鬼の攻撃を完全には防げず、
「――まずは一匹」
「ぐっ――くそっ、やめっ――」
ヘルズ覇鬼の空斬連射によって生まれた隙の連鎖をつかれ、距離をつめられ、
――ヘルズ覇鬼の居合切りの間合いに、セイラが入ってしまう。
間に合わない。
殺されるっ。
そう思ったと同時、
「もし、ニーの前で、いたいけな女の子を殺せると、本気で思っているのなら、まずは、その幻想をブチ殺す」
飛び出してきたニーの光壁で、ヘルズ覇鬼の斬撃が防がれた。
ニーのスキルで物理耐久を底上げした光壁。
破壊されはしたが、斬撃の勢いは随分と殺せた。
ならば、あとは、ニーのミラクルボディ(防御力99+魔王化&メタル化。魔法・スキル等で、防御力を最大600近くまで引き上げる事も可能)で楽に防げる。
ガキンと鈍い音が響き、ヘルズ覇鬼の長刀はへし折れた。
「信じられない硬度のスライムだな……というか、本当にスライムか……?」
ヘルズ覇鬼は、折れた刀をポイと捨てる。
刀は地面にスゥっと溶けていった。
直後、ヘルズ覇鬼は、両手にオーラを集中させる。
即座に、新品の刀を再召喚。
『オーラが残っている限り何度でも召喚できる魔刀』を構えなおし、周囲に目をくばる。
「鬱陶しいな……」
先ほどまで、『ハルスと自分(ヘルズ覇鬼)の戦闘』を『周囲から窺(うかが)うだけ』だったザコ共が、各々配置について、小癪な殺気を放っていた。
どうやら、ハルスの勝利を祈るだけのカカシではなかったらしい。
「特に警戒すべき相手ではないと判断したのは間違いだったということか……」
『間違う』のは例外なく悪い事だが、
取り返しがつく間違いならば、
対処しだいで間違っていなかった事にも出来る。
全方位を警戒するヘルズ覇鬼の向こうで、
まず、セイラが、ニーに、
「ぁ、ありがとう」
「感謝してくれるのなら、体と魔力を貸してくれないかな? そうすれば、足手まといがいなくなり、かつ、戦場が整うんだけど?」
ハルスが、
「貸すってことは、返してもらえんのか?」
「直接的な表現をするなら、ニーを装備してって言っているんだよ」
そう言うと、ニーは返事をまたず、
「武装闘気ランク5!!」
魔法を使うと、そのボディがグワっと広がって、セイラを包んでいった。
セイラの体表で、数秒、グニャグニャとうごめいた後、
「うわ……すごいっ……」
セイラは思わず嘆息した。
全身に、凄まじいエネルギーが供給されているのが分かった。
ニーのボディは、流線形のアイアンマ○スーツのようになってセイラを包んでいた。
その様子を見ていたハルスは、目を見開いて、
(す、凄まじい魔法を使うな、このスライム……おそらく何らかのアリア・ギアスも積んでいるんだろうが、ただスライムスーツを着ただけだってのに、セイラの存在値が爆発的に増している……今のセイラなら、サリエリくらいとなら闘えるんじゃ……)
ニーをまとったセイラは、
「これなら……一緒に闘える……」
ギラっと目を光らせて、ヘルズ覇鬼を睨むセイラ。
その様子を、少しだけ冷たい目でみつめているハルスが、ボソっと、
「……多少『小マシ』になったからって調子に乗って無謀に突っ込んだりするなよ」
『急に手に入れた強さ』は、人を狂わせる。
相対的に膨れ上がった万能感は、魂の調律を乱す。
「お前が死んだら俺も死ぬって事を忘れるな」
「自分の弱さは、わかってる。何度も言わなくてもいいよ、ハルス」
「……生意気な」
イラっとした顔でそうつぶやいてから、
ハルスは集中しようと、「ふぅ」と息をはいた。
今のセイラは、万能感からか、ちょいと粋っていて生意気だが、
これなら確かに戦力として換算できる。
(セイラのガードは問題ない……が、その代わり、シグレの護りが薄くなったな。あのスライム――『ニー』がいないシグレなんざ、ただのか弱いお嬢様……別に、シグレが死のうがどうしようが知ったこっちゃねぇが、あのお嬢様の絶命でニーの支配権が消えるのはヤバい……)
そんな事を想いながら、チラっとシグレの方に視線を向けると、
「ウイングケルベロスゼロ(EW)、スリーピース・カースソルジャー、召喚!!」
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