第115話 魂の系譜
勇者は、宝玉を破壊しながら、叫ぶ。
「殺す、殺す、殺す! 絶対に殺す! たとえ、この世が終ろうと! んなもん関係なく、てめぇを殺す!」
「初めて、ぬしに興味が出たぞ。教えてくれ。どうやるんじゃ? 世界が終っとるのに、わしを殺すって」
「言葉のアヤじゃい、ぼけぇ!」
割れた宝玉から溢れ出た光が勇者を包み込む。
ヒュゥゥンっと、空気が擦り切れる音がして、
「あばよ、くそったれ」
甲を向けてシッカリと両手の中指を立てていた勇者は消えた。
(ファッ○サインに銃の歴史……くくっ……確定だな)
これまでの諸々や、ラムドの頭の中にある記憶を探る過程で、センは確信した。
(きているな。最低でも一人は。遥か過去に、『懐かしき故郷』からの転生者、あるいは転移者……なんでもいいが、とにかく、一人は確実にきている。それが、アメリカ人なのか日本人なのか、今のところ、まだ、わからねぇが……しかし……ははっ、後輩になったのは初めてだぜ。先輩になったことは一度だけあるが……)
センは、かつて、転生した世界『第1ベータ』で、『日本から転移してきた『朝日』という小学一年生』と出会い、保護者の役割を担ったことがある。
朝日には、異世界での生き方を一から教えてやった。
反抗期になって面倒くさくなった朝日をボコボコにした。
ちょっと強くなったからと言って、調子に乗って邪神に挑み、死にそうになった朝日を助けてやった。
朝日がつくった国で、数年、宰相を務めてやった。
成人した朝日の結婚式に出席した。
朝日の子供に魔法を教えた。
朝日の孫を抱きしめたりもした。
(今、思い出してみれば、俺、朝日にだけは、妙に甘かったな。俺が、これまでの人生でとってきた弟子は、累計すると、軽く億を超えているが……一番手をかけたのは、間違いなく朝日だと断言できる)
才能があったというのは確かに理由の一つではある。
事実、朝日は、少し鍛えるだけで、存在値が、バカみたいにはねあがっていった。
けれど、才能、存在値、生命としての格、
あらゆる点において、朝日を上回る弟子が、センには三名いる。
ゆえに、朝日を最も可愛がっていた一番の理由は、やはり『同郷』だったということ。
(異世界転生の先輩、か……まだ、生きてんのかね。不死スキルの取得難易度は、さほど高くねぇ。ある程度の存在値があれば、比較的、楽に取れる)
ちなみに、朝日も不死のスキルを取っているので、今も普通に生きている。
もっといえば、センの『魂の系譜』に連なっているため、この場に『召喚』することもできる。
しかし、朝日は、第一ベータの『天帝』で、センと違って、クッソ忙しい身。
ゆえに、『迷惑』をかけたくないという理由で、
センは、朝日をそう簡単には呼び出すことができない。
ちなみに、センの『魂の系譜』に連なっている者は、全部で十七人。
そのうちの上位を、少しだけご紹介。
序列壱位「平熱マン」
存在値999
(第三アルファの超勇者。弟子を取るのに飽き飽きしている時期に、
『弟子にしてくれるまで纏わりつきます』と言ってきた鬱陶しいヤツ。
「これから永遠に『平熱マン』と名乗るなら弟子にしてやる」
――とっさに思いついた、
『死ぬのと比べたら、まだマシなことランキングで、かなり上位にくいこんだ条件』
……さすがに諦めるだろうと思ったが、そんなことはなかったぜ)
同列壱位「ゾメガ・オルゴレアム」
存在値999
(第二アルファの超魔王。八回目の転生時に出会った相手。
当時から既に、存在値800を超えていたので、最初はゾメガの方が圧倒的に強かった。
というか、
『こんなやつに勝てるわけねぇだろ。俺は神じゃねぇんだよ』
と思っていたが、そんなことはなかったぜ)
同列壱位「ミシャンド/ラ」
存在値999
(第66752ダブルマイナスエックスで生まれた悪魔種の超々々々々々突然変異。
存在値1以下(平均存在値コンマ2)の者しかいない最下級世界(ダブルマイナスエックス)においては、
桁があまりに違いすぎて、存在するだけでも、周囲の生命が残らず死んでいってしまう。
ただ生まれてきたというだけで、世界を滅ぼしてしまった災厄の邪神。
十回目の転生時、センによってウッカリ召喚されてしまったのがキッカケで弟子になる。
神々は、その結果だけを見て、ミシャを、飛びぬけて邪悪な思想をもつ特S級危険種だと認識しているが、
実際は、ただの気弱で根暗な小心者)
序列肆位「閃 朝日」
存在値810
(第一ベータの天帝。
『真なる究極超神』の系譜に連なる者の祝福を受けた世界ということで、
第一ベータは近々、アルファに格上げされることが決まった。
そのための諸々の事務処理に追われているため、現時点の朝日は、死ぬほど忙しい)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます