第36話 悪と悪の出会い。
結局、あのまま、教師もクラスメイトも帰ってこず、そのまま、下校時間になった。
(帰っていいのかな……てか、なんで担任こないんだよ。ホームルームしなくていいのか。うーん、まあ、いいや。普通に帰る時間なんだから、帰ろうっと。……佐々波、まだいるかな。ちょっと小腹減ったから、一緒にマックとか行きたいんだけど。おっ、なんか、今の俺、リア充みたい。ふふっ)
佐々波にメールを送りつつ、教室を出る無崎。
ちなみに、担任が来なかったのは、学級委員長の男子が、『今、教室に行くのは危険。無崎がブチギレてる。刺激しちゃダメ』という忠告をしたからだった。
(ぉ、佐々波から返信だ。第三校舎の前で待っている、か。OK。すぐ行くよん♪)
校舎を出て、第三校舎を目指す無崎。
センエースのSS『王者の風格』を再読しながら、本人的には、てくてくと、はた目には威圧感たっぷりに歩いていると、その途中、中庭を抜けたところで、無崎は、
(うぉぉおおおおおっ、あのベンチに座っている金髪の人、とんでもない美人! 佐々波や上品さんに匹敵する超美形! この学校、レベル高ぇぇぇ!! 美人、多すぎぃ)
その『えげつない気品のある超美少女』をチラ見しながら、
彼女の前を通り過ぎようとした、その時、
――パチパチパチ。
と、エレガントな拍手が聞こえてきた。
金髪のスレンダー超美少女に目線を向けると、
彼女は、蠱惑的(こわくてき)な微笑みで無崎を見つめている。
決して、目の奥は笑っていない、ペルソナの微笑み。
「美しい殺気でした」
(さっき? いつの事? 聞き間違い? てか、これ、俺に言ってんの? 違うよね?)
「すべて見させて頂きましたわ。美しい。本当に美しいオーラ……感服いたしました。まさしく、魔王。王者の風格」
(魔王? 王者の風格? え? これの事?)
無崎は、手中のスマホをチラ見して、
(見たって……ぁあ、もしかして、『これを読んだ』って事か。ぁれ、この人、センエースのファン? 『自分も読んだよ』ってアピール? でも、なんで俺のスマホの中身がわかったの? ……もしかして佐々波みたいにハッキングしたとか?)
「間違いなく、あなたはわたくしと同類。悪を愛し、悪に愛された者」
(やっぱり、そうだ。どうやって俺のスマホを覗き見したか知らんけど、確実に、自分も『悪をテーマにした小説を愛している』という露骨なアピール。かなり厨ニっぽい点も、『ダークファンジー好きがこじれた結果』だろうな。あぁ、嬉しいなぁ。同志に会えるとは思ってなかった。まあ、全部で5000人もいるマンモス学校だから、絶対に一人くらいは、センエース好きもいるだろうとは思っていたけど、まさか、こんな超美人さんがセンエース好きとは……っ、まさか、この世界は本当にラノベ時空? ついに、俺も迷い込んでしまったのか? まさかのハーレムルート突入?)
「はじめまして。わたくしは、超特別待遇生徒・序列一位の蛇尾呂姫と申します。どうか、お見知り置きを」
(うぇえ……超特の一位? つまり、この学校のトップって事? 凄ぇ人じゃん。ぅ、うわぁ、やべぇ。超美人で、超天才で、おまけに同じラノベ好き。ぜ、絶対にお話したい。けど、緊張で口が開かない! このままだと、挨拶されているのに無視している感じになっちゃう。それは普通に『人としてダメ』だって。せっかく出会った同志に人間失格だと思われるとか、最悪! 何とか喋らないと。俺も挨拶を、自己紹介を……ダメだ。緊張で口が貝になっている! 佐々波! 助けて!)
必死で助けを求める無崎。
――そこで奇跡。
まるで、無崎の悲鳴に呼応するように、
「おんやぁ、そこにいるのはロキセンパイじゃないっすか。ボクのセンセーに何か御用っすかぁぁ?」
((さざなぁぁみ! 流石の出来る女! 超天才の超美少女! 助かった! 通訳してくれ! 緊張で口が開かないんだ! とりあえず、自己紹介がしたい!
「すでにご存じだとは思うっすけど、一応、紹介させてもらうっす。こちらが、無崎朽矢大センセー。いずれ、この世のすべてを治める、全人類の王様っす」
((ボケはいらーん。普通に紹介しろぉ! 頭がおかしいと思われたらどうする!
「うふふ。残念ですが、このわたくしが、この世の支配構造をすべて壊してしまいますから、世界の統治などは出来ませんわ」
(乗ってくれたぁあ! っていうか、想像以上に厨ニだったぁ! シュタゲのオカ〇ン系でしたぁあ!)
「この世が本当に必要としているのは、全てを塗(ぬ)り潰す闇。漆黒に染まった混沌だけが、命の最終地点。あなたも、そう思いませんか、無崎さん」
(凄ぇな。こんなシッカリとした厨ニさん、実際には初めて見た。アニメや漫画では散々見てきたキャラだから、慣れているつもりだったけど……リアルで会うと、こんなにキツいのか。……せっかくの美人さんなのに、なんて残念な人なんだ)
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