第10話

もうばれたよね、ぼく…いや、私、雨宮春音(あまみやはるね)は同性愛者です。

自分が女の子だけど、女の子を好きになる

茜も、流愛も。

友達としての好きなんじゃないかってずっと思ってたけど、異性への恋愛感情を持たなかったり週末会えないだけで辛いこの感情は友達関係だけじゃないはずなんだ

だからって誰かに言う訳ではなく自分の中だけの秘め事として隠している。未だ同性愛は全ての人が納得してる訳では無い。流愛も茜も友達としての好きだと思ってる。きっと。

自分の心を守るために、虐められないために

今は隠し続けている。


「るあー?好きだよ。」

「またいつものそれー?笑 知ってます!笑」

ほらね?僕も冗談ぽく言うのが悪いけど友達としての好きとしか思ってない気がする

それがもどかしくてまた抱きつく

「はーるーー?」

「…ふふ、可愛い笑」

「私のどこが可愛いの!はる今ふざけてるでしょ!」

「あれ、バレちった笑」

…楽しいなぁ、付き合いたいなぁ、本当に。

これでも照れてんのめちゃめちゃ隠してるんですけど。まず僕が精神的にやばいってこと気づいてないとこんな外れたとこ来ないんだよなぁ、本当に嬉しい…

「ねね、今日一緒に帰ろーよ」

久しぶりに誘ってみる

「いーよぉー?」

何そのだらけた返事。かわよ。

「やった笑 じゃあ放課後待っててね?」

「任せんしゃい!」

それから僕はずっと彼女のことを抱きしめていた


「怖いの治った?」

「…流愛のおかげで治りそう!」

「私のおかげー?それは良かった笑」

「じゃあそろそろ戻ろっか。」

「…うん」

本当は戻りたくない。ずっと流愛と一緒にいたい。甘えまくりたい

けどそんなこと言う勇気は、ない。


ーー昼休み


給食時間のチャイムが鳴り響き終わった後、僕はほとんど無意識の状態で流愛のところに駆け寄った。

そして抱きつく。いつものパターンだ。

「ぐえ」

流愛の苦しそうな声、僕そんなに強く抱きしめてないんだけどなぁ。

「流愛」

なに、と苦しそうな声が返ってくる

「身長高すぎ、背伸びしても届かないんだけど、」

「悪かったねぇでかくて」

でもこれはこれで恋人同士って感じがしてドキドキするけど。

一つ小さな願いがある

流愛の方からいつか僕のことを抱きしめてほしいっていうつまらないただの願い。

こういう欲求がありすぎるから困ってるんだよなぁ、まさに人依存状態。

「いーや、流愛はこの身長がいい」

「言ってること矛盾してるし」

「今の流愛が好きだもん」

こうやって愛情表現はめちゃめちゃできるんだけど、抱きしめてとは言いづらい謎問題

女子からボディタッチされるのはめちゃめちゃ嬉しいしなんならドキドキしちゃうんだけど男子になると反応が真逆になる

男子相手には握手することすらできなくなったりする、特にやばい過去がある訳ではないんだけど、なぜか拒否反応が起こってしまう。

ま、同性愛者ってのも関係しているのかなとか思ったりなんなり、病院に行って診断してもらった訳ではないから本当の同性愛者なのかもわかんないけどね。

昼休みはこうやっていつも流愛とたわいもない会話をする。数少ない幸せな時間だ。

おんなじクラスでよかったとつくづく思う。

今日は若干情緒不安定になっちゃったから人の視線とか話し声がうるさく感じる。それが少し怖くて僕は流愛の袖を強く握る。

それに気づいた流愛が握られてない方の手で僕の手を優しく包んでくれた

こういう少しの気づきと気遣いができる彼女に惹かれたんだよなぁ、と毎回のように思う

もういっそこのまま時間が進まなければいいのにとほぼ毎日思ってたりすることは誰にも言えないだろう。

こんな日が続けばいいのにな、って。

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