第5話

「ふぅ。」

現在の時刻7:45

門限の8時まであと15分だ。この季節なら自転車で8分弱で家に着くからありがたい。

でも何となく帰りたくないから毎日毎日門限ギリギリに帰って親に睨まれる。

1分前とかに帰ってきたことはあるけど門限を破ったことはないから何か言われたことは無い。

よし。帰るか、と自転車を漕ぎ始めようとした。


ーーその時だった

僕のスマホに1件の通知が来た

通知を見ると僕が趣味で投稿していた動画へのコメントが来ていた。

僕はSNSに自作曲を上げてる。スマホに作曲アプリを入れて簡単な曲を不定期で投稿している。

最初は曲に対してのアドバイスが欲しくて投稿していたが今となっては自分の曲を色んな人に聞いてもらいたいという思いが強くなっていた。自分の考えのはずなのに綺麗事を並べたような言葉で気持ちが悪い。

そのコメントに目を通すと、

「とても心を惹かれる楽曲でした。突然で申し訳ないのですが、実は私、SNSを中心に歌い手として活動しているものなのですがもし良かったら一緒に音楽活動を行いませんか?」

「是非ともこの曲に歌詞をつけて歌わせて頂きたいと思いコメントさせて頂きました」

おぉ。僕も有名になったもんだ。と半分他人事のようになりながらコメントを読んでいた。

さて。どうしようか。

僕は作詞は全く出来ないから自分の曲に歌詞がつくなんて思ってもいなかった。歌詞がついたらどんな雰囲気になるんだろうという期待もあった。

でも、僕は中学3年、受験期真っ只中なのだ。志望校への学力は現状では十分足りているが親の監視があるからそんなに易々とは行動出来ない。それに人と話すのは正直得意じゃない…

7:50、うわ、やばい、信号噛み合うかな…家に帰ってから考えよう。と思い今度こそ自転車を漕ぎ始めた。

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