第4話

放課後の面接練習が終わり、一旦家に帰る。

まあ、またすぐ外に出るけど。このめちゃくちゃ重い荷物たちをどうにかしたい。

放課後に行くところといったらほとんどの場合塾の自習だ。別に勉強が好きとかじゃない、ただ単に一人になりたいだけ。

平日は何曜日にどこの教室が空き教室になるかを把握している。ずっといってたら自然に覚えるもんなんだなって改めて感じたよ。

夏なら近くの河川敷に散歩しに行ったりするかな。空がとってもきれいに見えるところで、春なんかは桜が満開になるんだ。

楽しいよ、上を見て歩くのは。嫌なこととか真っ青な空を見てるとどうでも良くなっていくんだ。本当に僕にとってはありがたい。

でも、今は10月上旬、もうすっかり秋になってきてかなり冷え込んでるから今日は塾に行こう、行く途中にコンビニでも寄ってなんか買おうかな。

なんて思いながらマンションの玄関につき、エレベータの階数ボタンを押して家へと帰る。



「ただいま」

少しだけ小さな声で声にして家に入る。

靴がない、まだ誰も帰ってきてないみたいだ。少しばかり嬉しく思っている自分がいる。

とりあえず塾用の鞄とスマホと財布を持って足速に準備を進める。誰も帰ってくる前に。

よし。

一階に降り、自転車置き場から錆び付いてボロボロになった自転車の鍵を開ける。ああ、もうそろ買い替えたいな、流石にダサい、と思いつつある。

あ、僕は別に複雑な家庭環境にあるとかではないよ。ただ学校のテンションを家でもし続けるのが嫌だなって。親に同じテンションで接するのは…少し苦手かな。怒られた時に少しばかり悲しくなっちゃうからさ、

まあ、誰だってそうだろうけれど。僕以上に大変な人なんてこの世にはごろりといるんだから。恵まれているよ。最近は親も感情的になってなくて、本気で怒鳴られることはないかな。本当楽になったもんだ。笑

自転車は好きだ。漕いでいると誰の力も借りないでずっと遠くに行ける気がしたから。

自分の知らない世界にいける気がして少しだけ、ワクワクしてくる。


ふう。近くのコンビニに着いた。自転車を止めて中に入る。

買うものは既に決まっているけどなんとなく雑誌コーナに足を運ぶ。もちろん雑誌なんて買う予定ないけど。

表紙の女優さんかわいいなとか俳優の人かっこいいなって思って買う人がほとんどなんだろうな、と思いながら適当に時間を潰す。

本来僕は勉強したくない精神だから塾に積極的に行きたいとは思っていない。でも家には絶対居たくないからこうやってなんとなく時間を潰している。

…飽きてきたな。と思い、お茶とおにぎりを一つ、取ってレジに向かう。

「250円です」店員さんの声が響く。

そろそろ月末だし、金欠になりつつるなと思いながら百円玉2枚と五十円玉をトレーに出す。

「ありがとうございましたー」その言葉を半分耳で聞き取りながらさっき止めた自転車のところに行く。

さてと、今は5時か…そろそろ行くか。

と思いながら自転車の鍵を外しまた走り始める。

楽しい自転車に乗っていても塾に行くときだけは、毎回少しだけ体が重くなるのを感じるんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る