第3話

「…みや…あまみや!!!!!」

突然名前を呼ばれてびっくりする、誰だよ、昔話いいところだったのに。

「ぼーっとしてねーで!ほら!面接練習!!」

はあ。めんどくさいな、と思う。面接なんかしたってその人の人間性なんて知れるはずないのに。

「おー!わかった!」

そんな意見を持っていても僕は表に出すことができない。自分の思っていることを人に話せないから。

誰一人として僕のせいで不快にさせたくないから、周りの空気を読み時には気の利いた言葉をかけ、でもいつも元気で悩みなんてなさそうな”普通の中学生”を演じる。

友達と一緒の時は何がなんでも笑顔を絶やさない、それが僕の人生だから。

ねえ、君に言われたこと、僕はちゃんと守ってるよ。僕も君に何かお願い事すればよかったなあ。そんなこと悔いても遅いんだけどさ。

ああ。だめだ、思い出したらだめだよ、

泣きそうになっちゃうじゃないか。

君にもっとしてほしいことがあったよ、抱きしめられたかった。愛されたかった。好き、愛してるって一回でいいから言われたかった。

…言われたかったのに。



こんなことを言ってるけど、彼女は死んではいないんだ。

僕より一つ年上の茜は華のJK、ちゃんと生きてるよ。通信制の高校に通っているけどね。

最近は会えてないんだ、僕の親が会うなって。笑 口出して来んなって感じなんだけどさ、

キレさせると面倒だから仕方なく諦めてるんだ、

一回、なんで会ったらだめなの?って聞いてみたことがあるんだけどさ?

「なんでって…通信制の高校なんて、いわゆる”ダメな子”が行くところでしょ?春音がそんな子と仲良くなったら色々悪影響だからダメよ」って。だから仕方ない。僕は全日制の偏差値の高い公立校にしか行けないから、もっと頑張らないと。

ってな感じでもう1年以上会えてないな。1年って書くと短く見えるけど、僕にとってはめちゃめちゃ長かった1年だった。

せめて…あと一回だけでもいいからいつか会いたいな。君に言いたいことがいっぱいあるんだ。

そんな日を待ちながら僕は一日一日を笑って過ごしている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る