第2話

時が経ち、中学3年。僕は受験期を迎えていた。

面倒に感じる進路の授業を受けながら、また一つ大人の階段を登るのか、と考える

そんなことを考えるから、ほら、吐き気がする。気持ち悪い。大人という存在そのものが嫌いだ。


ふと、2年前の状況が脳裏に広がる。

薄暗い部屋、うるさい程耳に入ってくる呼吸音、血の匂い、目の前にはナイフを持っている愛しい親友。

僕は変わり果てたその子、水森茜を見て、まるで他人事のような感覚に陥った。

ーこれは、夢だ、夢なんだ。そうなんだろ…?ー

誰にも聞こえないくらいの小さな声で呟いた。聴かれたくなかったわけじゃない、恐怖と不安で声の出し方すら忘れてしまいそうだったからだ。

大丈夫、これは夢。茜は絶対に僕のそばからいなくならない。絶対に。

そんなことを考えていると、彼女がナイフを持ってきた。そして一語一語丁寧に言ったんだ

「私を、殺してー。」

その言葉を聞いた瞬間にこれは夢じゃないことがわかった。その言葉を言った時、君は笑っていなかった。

本当に消えたい、そんな思いが一瞬にしてみてとれた。

「嫌だ!!!!!!」

ただただ本能的な感情が声として出てきただけだった。君の自殺を止めることも、心を癒すことも、僕にはできない。

でも、君が死んでしまったら、僕はどこに行けばいいのだろうか、誰に頼ればいいのだろうか、そんなことばかり考えていた。過呼吸で倒れてしまいそうになる。頭がフラフラしてきた。

彼女は僕の感情だけをのせた意見に若干驚いていたが、すぐにまた絶望の顔に戻っていった。

「…なら、いいよ。」

独特な金属音が鳴る。彼女が自分自身の首元にナイフを当てる。

「ねえ、春音。私がいなくなっても、泣かないでね?」

ーそんなの、無理だよ。ー

「私、春音と笑っている時が一番幸せだった。だから、泣かないで、笑って。」


「私の分まで笑って。」


そこで、僕の意識は途絶えた。

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