第十四話 宣誓
「エリザベッタ様、並びに御一同様方、入られます」
従者の案内で謁見の間に入ると、玉座の両脇に立つ二人の男性の姿が見えた。
一人は美しい魔族。立派な角を持ち、立ち姿からは気品が漂っている。
もう一人は雄々しい大柄な獣人で、いかにも武人然とした印象だが、
その顔立ちはどこか愛嬌のあるものだった。
「ヴァレリオ叔父様、カイル叔父様」
リィザが会釈をすると、その横では、前で両手を組んだマヘリアが恭しくお辞儀をした。
「ん…」
ヴァレリオが二人に応えるように、目を細めうなずく。
「おぅ! リィザ、マヘリア! 久しぶりだ! 昨日はすまなかったな! オレも昨晩戻ったばかりだ!」
カイルは、いつもの大きな声で言うと豪快に笑った。
大きな体を揺するようにして笑うカイルを呆れた顔で見ながら、ヴァレリオが鼻で小さくため息をつく。
「お前も騎士・兵団を統括する立場なのだ、いい加減落ち着いたらどうだ」
「このオレに大人しく書類仕事が出来ると思うか? 領内の巡回も立派な仕事だ、ヴァレリオ! 最近は盗賊どもも増えてるしなっ!」
「賊への対応はいいが、お前が王都を空けていてはいざという時に困る」
「お前がいれば、どうとでもなるだろう! ハッハッハッハッハッ!!!」
「~~~……っ。あのな、カイル! だいたいお前は昔から……!!」
「……あぁ~……叔父様たち、また始まっちゃった……」
「国王陛下が、お出ましになられます」
ヴァレリオがめずらしく感情をあらわにし、カイルに食ってかかろうとした時、国王レナードが奥の扉から謁見の間へと入ってきた。
ヴァレリオとカイルは、右手を胸に当て、目を伏せる。
リィザたちも片膝をつき、レナード王を迎えた。
「エリザベッタ、マヘリア、よく来てくれたね」
「陛下」
片膝をつき顔を伏せるリィザに、レナード王は温和な笑みを浮かべた。
福々しい見た目だが、弟であるヴァレリオやカイルたちよりも若く見える。
「楽にしてくれ。クロヴィス、ランスロット、カティア、君たちもだ」
慣れた様子のクロヴィスに対し、ランスとカティアはおずおずと立ち上がった。
ランスにいたっては、顔を紅潮させ立っているのもやっとなほど緊張している。
「陛下」
「うん。始めてくれ、宰相」
「はっ。エリザベッタ・ウィスタリア、並びに同行の者たち、前へ」
リィザたちが前へ歩み寄り再び片膝をつくと、レナードは剣を抜きリィザの肩へと当てた。
「我がウィスタリアの名の下に此の者を勇者と認め、精霊神イゾルテとの約定に従い、此の者と共に叛徒を滅し国を安らかにすることを誓う」
「さ、堅苦しいのはここまでだ。私はこれで下がるから、後は楽にしてくれ。
ヴァレリオ、カイル、頼んだよ」
そう言って剣を納めると、
「エリザベッタ、決して無理はせず困ったらいつでも頼っておいで。マヘリア、君たちも、エリザベッタを頼むよ」
「はい。陛下」
リィザに微笑むと、レナード王は謁見の間を去っていった。
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