第七話 魔獣
複製体がさほど危険ではないと知った候補生たちの間では、安堵の空気が広がっていた。
「……よかったぁ。びっくりしちゃった。
ねぇ、ところで、さっき言ってた魔獣の"特性"、ってどうゆうこと?」
「……………………」
「……………………」
マヘリアが訊ねるが、リィザとランスは数回瞬きをするのみで答えない。
「…魔獣の出現間隔が、例外を除き、相当年数空くこと。
魔獣が、魔物と違い、同じ特徴を持つものが存在しないこと。
そもそも魔獣討伐が基本的には、
兵団・騎士団ではなく、勇者の領分であること、よ。
つまり、過去の魔獣各個体に詳しくなったところで、
魔獣が出現するころには戦える年齢じゃなくなってる可能性が高いし、
戦うのは勇者だし、
万一戦う必要が生じたとしても、その知識は生かせない。
それなら、目の前の脅威である魔物に対抗する術を学ばせたほうが良い、
ってことね」
「さすが、カティアっ。なんでも知ってるねっ」
「…講義でやってたからね」
「…………あれ?」
「…マヘリアはともかく、
リィザとランスまで聴いてなかったとは思わなかったけど」
「私はともかくって、ひどいよ、カティア~」
「あたしは、マーが、何食べようと考えてぼーっとしてるか、を推理してたから」
「俺は、」
「…ランスのは、わかるからいい」
「さぁ、おしゃべりの時間はおしまいだ。そろそろ始めようか」
ベッカが言い放つと、候補生たちは一斉に静まり返った。
緊張感はあるものの、候補生たちの表情はさきほどとはうってかわって、わずかだが余裕もうかがえる。
ベッカは、しばらくなにかをつぶやくと、指を鳴らした。
演習場に音が響くとともに、魔獣の色がすこし変わった……と、いうよりも、魔獣を包んでいた光が消え去ったためのようだった。
途端。
魔獣が、その巨大な角を前に向け、猛然と突進した。
候補生たちを次々と宙に跳ね上げ、弾き飛ばし、一瞬のうちに駆け抜け止まると静寂と砂埃の中すこし間をおいて、跳ね上げられた候補生たちが落ちてきた。
その音から一拍置くと、演習場は形容しがたい叫び声で包まれた。
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