第2話 四天王より強い女

「...へ?」


 理解が全く追いつかない。だが、理解が追いつかないときこそ冷静になり、俯瞰するのが我が教訓。まず、私は元々私が住んでいた世界で死亡。その後、目を覚ますとこの世界に...ということか?所謂、”転生”というものなのか?いや、見たところ私の体にはほとんど変化がないように感じる...その場合、転移とかなのだろうか?


「ねえ!その制服、うちの学校の制服だよね!?」


 私の考えを遮るように背後で誰かが大声をあげる。


「やっぱり!君私と同じ学校だよ!」


 振り向くとそこには、茶髪で肩くらいまで髪を伸ばし、私と同じ奇妙な服を着た小娘が嬉しそうにその場でぴょんぴょん跳ねている。


「君入学式の時いたっけ?あ!最近引っ越してきた感じ?ここで出会ったのも何かの縁!一緒に学校行こうよ!私は藤谷そら!ソラちゃんって呼んでね!」


 早くもこの陽気な小娘のペースに飲まれそうになる。しかし、私は数々の魔物達を従えていた魔王。ただの小娘のペースになんぞ飲まれることはない。第一印象は大事だ。ここは私がいかに聡明で優秀であるかをこの小娘に思い知らせてやろう。


「フハハ!自己紹介が遅れたな!私こそが、王都カントリーを焼け野原にし、歴代の大勢の勇者達に無惨な終焉を迎えさせ、何万...いや、何千万の人間を跡形もなく灰にした第23代目の大魔王”フラステール・ナプスタガンド”様だ!今なら我が配下に加えてやってもいいぞ、光栄に思え」


「はは!なにそれ変なのー!とりあえず遅刻寸前だから学校までダッシュで行くよ

!ちゃんと私の手握っててね」


 そういうと小娘...いやソラは私の腕を強引に掴み急に走り始めた。


「ちょ、おいっ!カーブ!カーブ!曲がれ!はやく曲がれええええ!」


「魔王ちゃん!曲がるよっ」


 ソラは角を曲がりきることが出来たが、私は遠心力やら重力やらでうまく曲がることが出来ず、思いっきり壁に衝突した。私が衝突した壁には大量の鼻血が付着していた。


「あっ、ごめん!でも、ここで止まると遅刻するから我慢してね!学校ついたら保健室にばんそうこうとかあるから!」


「貴様...ただの人間のくせに...ゴフッ...この大魔王に重症を負わせるなんてな...」


 それからも私は、壁に衝突したり、引きずられたりした。こんなに壁と長時間密着したのは生まれて初めてだ。四天王よりソラと壁のコンビの方が私に重症を負わせている。


 ...まぁ、なんとか学校には到着したものの見事に2人とも遅刻だった。







「魔王ちゃん、動いたらちゃんと手当てできないでしょ!じっとして!」


 私の腕を抑えながら、傷口に謎の滲みる液体を塗りつけながらソラは言う。


「いっだぁい!いだぁぁい!馬鹿野郎!こんな毒薬を私の傷口に塗るなんて毒殺する気か?」


「はいはい、これは毒薬じゃなくて消毒液だよ。傷口はきれいにしないとダメ。じゃあ、もっかいやるからじっとしててね。えいっ」


 あまりの痛さにのたうち回る私の悲痛な叫びを無視しソラは容赦なく私に消毒液を塗り続けた。


 「ぎぃやああああああああ!」


 ...私が行ってきた虐殺の被害者もこういう気持ちだったのだろうか。

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魔王、女子中学生になる。 惣菜テト @kennpou

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