魔王、女子中学生になる。

惣菜テト

第1話 魔王死す!

「...魔王、ようやくここまで追い詰めたぞ!お前の命も悪行も...すべてここまでだ!」


 上質な赤いマントを羽織り、世界にある伝説の聖剣のうちの1つを手にしている”勇者フォルティオ”が私に迫る。後ろでは魔法使いヴェネ、黒魔術師ザイル、戦士ハイツ、シスタークーネ達が見下すような表情で私のことを見ている。


「おい魔王、何か言い残すことは無いか?」

 

「..................」


 完敗だ。私の部下達、四天王も全員こいつらにやられてしまった。もう私にはこいつら5人と戦う魔力も人員も何も残っていない。出血がひどい。このまま何もしなくても私が死ぬのは時間の問題だろう。だが、私はそう易易とこの世を去るつもりはない。


「この期に及んで黙り込むなんてな。じゃあ、トドメだ。その首、王都で末代まで飾ってやるよ」


 フォルティオが聖剣を私の首に当てようと刀を振り上げた。チャンスは今しかない。


「...今だ!四天王ルギウス!背後に回れ!」


 全員が一斉に振り返った。その隙に私は城外の森へと転移魔法を使った。この森はここへ迷い込んできた人間が確実に帰れないように設計してある。勇者達だろうがそう簡単には私の居場所がわかるまい。


「...魔物の死体は跡形もなく灰になって消える...ここ数年は、私がどこかで生きているかもしれない恐怖に怯えながら...人類は生活することになるだろう...私の勝ち...だ...バカどもめ...」


 そこで私の意識は途切れた。







「アンター!はよ起きへんと学校遅刻するでー!今日初日なんやから気合い入れてきやー!」


 知らない天井、知らないベッド、知らない部屋、私は目覚めると全く知らない空間にいた。


「なんだここは?」


 私が困惑していると突然人間が部屋に入ってきて、私の口にパンを突っ込んだ。


「アンタ今何時やと思ってんねん!お母さん、何度も何度もアンタのこと起こしたで!もう、さっさと着替えてはよ学校行き!遅刻したら内申点に響くで!」


「何だ貴様!この大魔王にたかが人間風情が調子に乗りやがって!不敬だぞ!」


 すると人間は大激怒し私をぶん殴った。


「っ!なんという速度だ!何度も光速の雷神トニトルーと手合わせし、幾度となく勝利してきた私が反応できない速度の拳だと!?」


「アンタお母さんに、貴様とかかっこつけてるんとちゃうで!なに言うとるかはわからへんけど、はよこの制服きなさい!とりあえず荷物はあとで届けたるからはよ家でなさい!!」


 そういって人間は光より速いスピードで私に変な服を着せると、私を外へ放りだした。


「おい!光速の拳!私を外に出すなんて何様だ!」


「アンタもうそういう変なんはええからはよ学校行きなさいっていうてるやろ!」


 光速の拳はドアを勢いよく締め、鍵をかけた。私はどうしたらいいのかわからずその場に立ち尽くしていた。


 

 

 

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