ep.4   ペンギンのちアザラシ、ところによりキタキツネ

 ある日の昼休み、お花摘みを終え教室に戻ろうとしていたオレは、腰にわずかな衝撃を感じていた。



 ぺしぺし……ぺしぺし…………



 振り返るが、そこにはだれもいない…………。


 再び前を向くと、また……。



 ぺしぺし……ぺしぺし…………



「……後ろだとっ!? …………だれもいない……? ……いったい…………」



 三たび、前を向く。



 ぺしぺし……ぺしぺ……



「ぅおぉいっ!!」



 振り向きざま、後ろに立っていた女子の頭を掴む。


 これが、オレとこいつとの「お約束」だ。

 



 こいつは、真瀬まぜ らん

 高めの位置の大きなポニテ、アンニュイな目元。小っちゃい。


 オレとは同じ中学で、当時から何度あれをやったことか……。



「また購買のサンドイッチ1つか? 大きくなれないぞ?」


「このままでいいから、だいじょうぶ」


「いいのか。なら、しょうがないな」


「うん。シローは、ちょっとお肉ついたね」


「そんなに増えてないわっ。……いや、まぁ、部活引退して以来まともに動いてないし、ちょっとは増えたけど……腰をはたいて、そこまでわかるんじゃないっ。

匠かっ」


「ふふ」



 真瀬は、ぺたぺたと歩き去っていった。

 

 ……いやん、そんなに太ったのかしら…………マジか……。




 軽くショックを受けていたオレの腰に、ひかえめな刺激が走った。



 ちょんちょん……ちょんちょん…………



 振り返ると白井さんがいた。


 あ、白井さん。かわいい。



「…………あっ…………」



 …………? なんだ? なぜかモジモジしている……。

 チラチラ見る仕草が、かわいい……。


 ……いや、言ってる場合か……なんだ……くみ取れ、オレ……。



 …………もしかして……やりたかったのか……さっきの……。



 ダメ元で前を向いてみる。



 ちょんちょん……ちょんちょん…………


  

 振り返り、あたりを見回す……また前を向く…………。



 ちょんちょん……ちょんちょん…………



 「ぅおぉいっ!!」



「~~~~~~~~~っっっ…………」

「~~~~~~~~~っっっ…………」



 ダダダダメだっっ……!!

 ……なんだこれ、は…はずかしすぎる……っ!!!

 真瀬の時はこんなことなかったのに……!

 白井さんも何か言ってぇ……!!




「なにやってんの? 2人して」


「えっ!? べっ…別になんでもないよっ、つねちゃん」

「姫滝っ…! 何って…なにさ……っ」

 


 姫滝……っ!!

 ……こ…これはどっちだっ! はずかしいのか、助かったのか…‥!!

 ……しかし「何って、なにさ」って何だそれ……! 落ち着け!!



「かわいかったね、さっきの子。ペンギンみたいで」


「……ん? あぁ…中学の同級生でさ、3年間クラスもいっしょだったから……」



「ふぅ~~~ん……」

「…そ…そうなんだ」



 ……え?

 な…何だ……?

 なんか……ごめんなさい……なんなんでしょう…………。


 




  




 

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