第13話 ヤバいっ!
昨日、水菜先輩はこっぴどく晴琉先輩に怒られ、20分くらい2人は何かを話していたらしく部活に来なかった。
先輩がいないと何をやればいいのか分からないから、昨日は結構フリーだったなあ……。
後半はしっかり来て、二人もいつもの様子に戻ってたから本気で怒っていたわけではなさそう。
なんだかんだ言って、あの二人はすごく仲がいい。
部活内でピリピリしていなくてよかった……。
「ねーテストどーだった?」
「あ、あかりんっ⁉」
ボケーッとしていたから、今何の時間か忘れるところだったよ……。
そうそう、今は前回やった数学の単元テスト返し。
と言っても小学校のまとめだけどね。
さっき名前を呼ばれ、今はテスト用紙が伏せられている状態。
まだ、見てないんだよね……。
「あかりんはどうだったの? 前、結構自信満々だったじゃん」
「ふふん、見て!」
胸をそらして自慢げに笑うあかりんの姿を見て、バシッと広げられたテスト用紙の右上を凝視する。
⁉
「ひゃっ、100点っっ⁉」
「えへへー」
待って、あかりんって勉強嫌いだよね?
この前の国語でも40点台だったし、社会とか英語なんてもっと下だったような……?
「や、やややっぱりあかりんって数学強いんだね……。わ、私も点数見ようかなー」
「え、見てなかったの⁉ 早く見て!」
早く早くと急かされて、ふうっと深呼吸。
意を決し、そろーりとテスト用紙をめくるっ!
80点台とは言わないから、せめて60点以上、いや、70は欲しいかも……。
計算問題しかなかったしね、半分くらい、あってても……。
「………………………………え」
「……これは派手にやったねー……アハハハハハハ………」
そこに書かれている点数が信じられなくて、2度見、3度見する。
「あかりん、私のこと叩いてくれない?」
「じゃ、遠慮なく!」
パシーーンッ!
「いったあああっ⁉」
「ごめん! やりすぎちゃった」
乾いた音がっ響いて、私の頬はじんじんとしびれる。
ゆ、ゆ、夢じゃなーいっ‼
「ああああああああっ!!!!」
「まいまい、しーっ!」
2度目の大声に、しいっと人差し指を立てているあかりん。
周りの人も何事かとこっちを振り返っていた。
こちらも、別の意味できれいな数字が並んでいた。
これはマジでやらかしたやつだ。
終わった………。
本気で部活、いけないかも。
この結果を親にどうごまかそうか、必死に頭をフル回転する。
そんな私を見て、あかりんが大爆笑。
目の前が真っ暗になるのとともに、キーンコーンカーンコーンと、軽やかなチャイムが鳴った。
◇◆◇
「いや~まさか0点を取る人がいるとは」
「イヤーマサカ100点ヲ取ル人ガイルトハ」
テストは、完全に私の答えの写しミス。
よくある『1段ずらして書いちゃった』に気づき、全部消した時に『残り3分』の声が聞こえ、うっすら残っている答えを大慌てで記入した。
しかも、焦りに焦ってまた1段ずらして答えを記入しちゃったの。
そりゃあ、0点になるよね。
というか、テスト用紙最初の方だけちゃんと✓が書いてあったけど途中から書かれてないし。
これはまあ呆れるよね、先生も。
「なんでさー、1問消して、また1問答えを書いて、ってやっていかないの?」
「そんなこと思いつかなかったんだって」
もう、と頬を膨らませている私を見て、あかりんが面白そうに笑う。
「先輩たちもあったのかな、テスト」
「水菜先輩、なんか理系な気がする」
「晴琉先輩もどちらかというと理系だよねー」
「海崎君は?」
「海崎君? うーん、理系?」
「みんな理系じゃん」
「なになに、私が理系だって?」
「「うわあっ!?」」
肩にポン、と手を置かれて後ろを振り返るとそこには笑顔の水菜先輩が。
「私はぜーったい数学無理! 理科もやだ、社会もやだ」
「えーっ、絶対理系だと思ってました!」
「朱里ちゃんは数学100点取ったんだって? 友達から聞いたよ。頭いいねえ……」
「そんなことないです! でも、あたしは国語が苦手で……」
テストの話が盛り上がってきたのか、「やっぱりそうですよね⁉」と、楽しそうな会話が聞こえてくる。
そんな笑い声に押し出されるようにして、自然と歩くスピードが速くなる。
楽しそうな2人を置いて、「先に行ってる」と声をかけ更衣室に向かった。
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