第4話  勇者は罪を犯したので二人を会わせることにします

俺にとって勇者はライバルでもあり、友人でもあり、そして恩人でもある。


俺と勇者が出会った日のことは昨日のことのように覚えている。どっか、山か川っぽい所で会って、なんかして、いろいろあった気がするような、ないような。まぁそれはいい。


俺は魔王という立場でありながら敵対する国の姫、コティリア姫に恋をしてしまった。魔王と姫が結ばれるなんてあり得ない、この思いを誰にも打ち明けぬまま奥底にしまおうとした時、俺を支えてくれたのが勇者だった。否定せず俺の悩みに親身になって答えてくれたことにどれだけ救われただろうか。だから俺はいつ何が起こってもこいつを助ける、味方になると思っていた。

思っていたんだが……







「うぉぉぉぉ、おおおぅあうぉおぉおぁ」 


城にくるなり奇声を発しながらスライム状になっていく勇者を俺はどう助けたらよいのだろうか。


「ディ、ディルク?どうしたんだいきなり?」


「ぁぁぁ、、俺は許されざることをした、」


普段は冷静なこいつがこんなになるほど恐ろしいことをしたのか、けどこれはチャンスなんじゃないか?


「俺に話してみろ!どんなことでも俺は受け入れる」


今までの恩を返す、そうして俺らは初めて対等になれるんだ。さぁ話してみろディルク!








「え?」


「うぅぁ…だから、お、おれはあれだけお前の相談役だということを秘密にすると思っていたのにあっさり姫にはなしていたんだぁぁ、」


「そ、…」


「そぉぉお…?」


「そんなことか?」



ディルクは鼻水と涙まみれの顔をあげてこちらを見た。どうやら自分は魔王の相談役をしているということを姫に話したらしい。何いってんだこいつみたいな顔だがそれはこちらのセリフだ。第一、


「お前あの花俺があげたことを姫にバラしていたのか」


「……うん」


「いや、その時点でアウトだろ。どこの世界に魔王に協力する勇者がいるんだ」


「は!」


「いや、は!じゃなくて」


だから匿名にして渡すと言っていたのに何をしてるんだこいつは。


「だって、おしかぷがぁぁあ」


おしかぷ?えなんて?

聞こうとしたが泣き崩れていきスライム状だった体がもう液状になりつつあったので人の形に戻るまで落ち着かせた。









長い時間をかけようやく人間の形に近づいてきた頃、俺はディルクに言った。



「さっきも言おうと思ったがもう俺とお前が繋がってる時点で怪しいと思われるだろ。今更相談役だと言われてもそれほど影響はなくないか?」


俺がそう言うとディルクは「違う!!」と言い目の前の机を叩いた。


「解釈違いなんだよ!!いいか?コティリア姫にとってお前はクールで少し影をもったミステリアスキャラとして定まっているが本当のお前は姫が好きすぎてIQが低い魔王なのに幽霊が苦手な情けないキャラなんだよ!でもそのギャップがいいんだ!!そうしていつしか二人が出会った頃、自分の思い描いてた魔王様とは違うけど私にしか見せない弱さが可愛くて好きとなるコティリア姫の未来のために俺はお前に脅され姫との仲介役を担っているってことにしたかったのに相談役って!魔王がなに勇者に相談しとんのじゃいってなるだろ!!!」



「お前がよく俺がコティリア姫について話してる時途中からゲームやり始める気持ちが今わかった」


長々と説明されたがさっぱりわからん。なんかIQが低いとか情けないとか言われてんのはわかったが。



「結局お前はどうしたいんだ?」


ディルクは先ほどまで血走っていた目を変え凛々しい表情で俺に言った。











「ザムザ、姫と面会するぞ」


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