第2話 勇者は推しCPのためならなんでもします

「好き、嫌い、好き、嫌い…」


「何やってんだお前?」


魔王ザムザに呼ばれ部屋に入ると、部屋の片隅で縮こまりながら花びらをちぎる人影があった。それは俺を読んだ張本人、ザムザであった。


「花占いだ、お前も知ってるだろ」


行為自体は知っている。だがそれは可愛らしい女の子、例えばコティリア姫のような人がやるもので大の大人のお前がやるべきものではない。そんなのもつゆ知らず、ザムザは花を千切っては捨て千切っては捨てを繰り返していた。


「はぁ、花よりも可愛いコティリアよ。どうすれば君の笑顔が咲く日が見れるのか」


「いつも笑顔だろ姫様は(半分くらいはザムザのことを考えてだけど)」


「大衆向けではない!有料会員のみ得られるファンサがほしいのだ!!」


ザムザが言うとややこしいので解説すると、いつも国の人や動物に向けるような笑顔ではなく自分のことを思って笑ってほしいという。いや、例えがめんどいな。


「でも会うのは厳しいんだろ?」


「あぁ」


「うーーん、じゃあプレゼントは?」


「プレゼント?」


「差出人は不明にして姫にプレゼントを渡す、それに喜んでくれたらお前のおかげで笑ったのも同然じゃないか?」


俺の提案にザムザは「名案だ!!」と言って快諾し、姫へのプレゼント計画が始まった。


「まぁ無難に花でいいんじゃないか?」


「しゃぁぁぁらっっぷぅぅ!!!」


突然平手打ちをするザムザを華麗によけ、逆にパンチを食らわす。


「なぜ英語」


「いてて、花なんてありきたりなものやってコティリア姫が喜ぶわけないだろ!!いや、彼女ならきっと石ころでも貰ったものだからと天使の笑顔を見せるだろう。そうではなく俺が見たいのは特別な笑顔なんだ!!」


そこからあり得ないぐらいの熱弁が始まり根負けした俺は、とりあえずザムザのセレクトしたものをあげる方針にした。少し持つように言われ待つこと1時間後


「悪いちょっと待ったか?」


「全然ちょっとじゃないけどいいぞ」


ザムザの後ろには手のひらサイズの小さい箱から天井まで届くほどの大きなものまで様々なものがあった。


「エントリーナンバー1番!結婚指輪(仮)」


「却下」


「なぜだ!!?」


「普通に考えて重い!見知らぬ人からの指輪なんて恐怖以外なんでもない。しかもなんだ(仮)って」


「結婚予定用の指輪だからな、結婚する時は新たにまた渡す」


「指輪はやめろ引かれるぞ」


「え、エントリーナンバー2番!ポエム」


「急にしょぼい!!きもい!!」


エントリーナンバー50番まで見せてもらったがどれも難アリで渡すにふさわしくなかった。ついには俺がプレゼントだと言いたしたのでぶん殴り目を覚まさせた。そして何度も審議を重ね、最終的にコティリア姫に渡すものは、


「えー、この花は昼間は枯れてるように見えるが月の光に当たると虹色に光を放つとても珍しい花です」


「はい良いでしょう」


魔族軍の住む所に咲く花が選ばれた。


「でも今渡すと枯れた花をプレゼントしたように思われないか?」


「昼間はドライフラワーとして、夜は月明かりが当たる所におけば花が咲きますってメッセージカードをつければ大丈夫だろ」


綺麗にラッピングをすれば、例え枯れていても商品と差し支えないものとなった。


「ではこれを魔鴉に持っていってもらって」


「いや、俺が届けるよ。カラスよりも俺が届けに行った方が怪しまれないだろう」


「そうかでは頼む!」


プレゼントを貰いバーム国へ向かった。魔王軍をだいぶ離れました所でオレ立ち止まった。周りを見渡すがそれらしき影はない。きっとあいつは俺の観察はしないだろう、つまり、このプレゼントに細工ができるということだ。


「ザムザ…覚悟しておけよ、」


俺はペンと先ほどザムザが書いていたポエムを懐から取り出した。




「私にプレゼントですか?」


「ええ、こちらを」


俺は包装した花をコティリア姫に見せた。

最初は枯れ花と思ったのか不思議そうな顔をしたが、メッセージカード読むとすぐに明るい笑顔を見せてくれた。


「昼はドライフラワーで夜になると咲く花なんて珍しいですね!ありがとうございます」  

 

「喜んでもらって良かったです。実はそれは俺からではないんです」


「そうなんですか?どの方からなのでしょうか、お礼を言わなくては」


「お礼は結構とのことで、贈り物はどうか他の者には秘密にしてほしいと伝言をあずかっております」


「そうですか…」


お礼を伝えられず少し悲しそうな姫様に俺はあるものを渡した。


「これはなんですか?」


「手紙です。お読みください」


コティリア姫が中身を開け手紙を読むと突然ばふっ!!という音とともにコィリア姫の顔が赤くなった。この瞬間、俺は場面を記録する魔法を発動しコティリア姫の赤面する様子を撮った。そして、すかさずそれを移動魔法でザムザに送りつけた。


「こ、こ、こ、これははわわわわ」


「では俺はこれで」


動揺する姫をおいて俺は城を出た。出た所でザムザの使い魔のカラスから紙切れを受け取った。中には「赤面尊し」と一文書かれていた。


勇者は推しCPのためなら小細工だってする








〜一方、コティリア姫は〜


「ま、ま、まさかこのお花魔王様が私に!?なにかの冗談?でもわざわざ魔王様を名乗る人なんているわけないし、し、しかも君の笑顔が見たくてこれを渡したなんて、そんなあばばばばば…」


「姫様ご夕食の、姫様!?」


「ぷしゅ〜…」


姫の顔の熱は一晩取れなかったそうな。




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