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そうして2人は、ブライアン様から聞いたという私の事ではなく、ほかの事を知りたいと言い、色々質問してきた。
答える私をブライアン様は始終笑いながら聞いていた。
とても穏やかで幸せな時間だった。
まるで、家族、のようだった。
家族。
そうか、と納得した。
王宮に来てブライアン様はとても表情豊かだった。何時も冷静で無感情の声での対応は、王子、であり、ブライアン様ではないのだ。
誰でも、家では心を許し寛ぐものだ。
それを私に見せてくれていた。いや、あの夜から私を特に気にかけてくれていた。
それが婚約者だから、と言うありきたりの理由だけでは無いのかもしれない、と思ってしまう。
そう思うと、私を調べていたのは、
私と言う人間を知りたかったからなのだろうか?
婚約者としての存在意義を求めたのではなく、フラン・トッリューと言う1人の女性を求めていたからだろうか?
そう考えた時点で、人間は貪欲になる。
見た事もない表情を、私だけに向けてくれている、と錯覚に陥ってしまう。
聞いたこともない声を、私にだけ囁いてくれる、と思い違いをしてしまう。
何か違う理由があって私を選んだのに、私を好きになってくれたのかもしれないと、甘い期待をしてしまう自分が、
とても嫌だった。
私は、あんなにマクロが好きだった。あの頃は、ブライアン様の事など微塵も脳裏に残らなかった。
それなのに愛情と言う掴めもしない曖昧な存在に気づいた時、
人は
核ともいえる心の泉に、手を伸ばしてしまう。
ブライアン様が悪いのだ。
優しくないと思わせて、優しく、思わせぶりな態度を取るから、
変に期待してしまうのだ。
夕食は陛下は急な用事がありご一緒出来なかったが、王妃様は参加され和やかな食事でとても楽しかった。
食後のデザートも当然美味しく、私もネイリン様もシャル様も満足した。
美味しいものを食べると心が満たさせる、というのは本当だわ、と幸せ気分だったのに、一気に現実に戻された。
何故かと言うと、就寝まで予習をしよう、とブライアン様に言われたからだ!
そうして、元々案内された部屋へと戻った。どうもここが私の部屋のようだ。
そして隣がブライアン様の部屋だった。
つまり、逃げれないのだ。はぁぁ。
それも、
私は頭が良すぎる女性が好きではない。でも、それなりに知識は欲しいんだ。大丈夫。私が教えてあげるから、
と、いう時はとてつもなく真剣な顔で言ってくる。
どういう意味よ。
確かに下から数えた方が早い成績だけど、こう言ってはなんだけど、礼儀や作法に関しては、褒められる程なのだから、問題ないはずだ。
不安的中で、いつもの無表情で淡々と、
理解出来た?
いつまでかかる?
それも分からないの?
口調は優しげなのに、それが逆にとても辛く厳しい時間だった。
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