21
「お義姉様!」
「お義姉様!」
ブライアン様が扉を開け確認する前に、全開され、元気な声の女の子が2人入ってきた。そして、私の両隣に座った。
「ネイリン様、シャル様、行けません!!」
その2人を追いかけるように4人の召使い達がついてきたが、部屋に入る手前で、きちんと足を止めて一礼し中に入った。だが、扉の近くにいるブライアン様を見て顔を引き攣らせ一斉にブライアン様の周りに集まると頭を下げた。
「申し訳ありません。お部屋には近づけるなと言われておりましたのに、このような事になり、申し訳ありません」
「謝る事ないわよ、ねえ、シャル」
「そうよ、お兄様がいつまでも独り占めしているから悪いのよね。ねえ、ネイリンお姉様」
私の両隣に座った女の子達は、いつの間にか私の腕に絡み口を尖らせ、召使いではなく目線をブライアン様に向けた。
「そうよ。今日だってご夕食をご一緒出来ない、なんて酷いこと言うんですもの、ケチなお兄様よ」
「そうよそうよ。お義姉様が初めてお泊まりになった時も独り占めして、全然会わせてくれなかっもん。カレンが酷いことしたから暫く王宮にお住まいになるのに、また独り占めしようとしてるよの。ケチなお兄様よ」
赤と青の色違いのドレスを着た可愛らしいこの女の子達がブライアン様の妹であり、この国の王女様だと直ぐにわかった。
スッとした顔立ちがブライアン様によく似ている。
赤のドレスを着ているのがネイリン様だろう。身長が高いし大人っぽい。確かカレンと同じ歳だった筈だ。
そして、青のドレスを着ているのがしたの妹のシャル様だろう。確か今年13歳だった筈だ。まだ幼い顔をし話し方も幼いが、やはり身のこなし気品が溢れている。
「そうでは無い。フランはまだ王宮に慣れていないのだ。父上にももう少し慣れてからの方がいい、と言われただろう?」
「私達は、納得してないもん」
「その通り、納得してないわ。ねえ、お義姉様、ご一緒に夕食をしましょうよ」
「凄いいい考えね、ネイリンお姉様。いつかご一緒するなら今日でもいいよね。そうしようよ、お義姉様」
「そ、それは・・・」
2人の元気ながらも甘えてくる声に正直戸惑っていた。それも、目をキラキラさせてお願いされれば、嫌な気分はしない。でも、また気になる言葉がでてきた。
さっきまで一気に沈んだ気持ちが、一気に浮かび鼓動が早くなってきた。
「お前達下がってよろしい。ネイリンとシャルは私の方で見る」
「恐れ入ります」
苦笑いしながら言うブライアン様の言葉に安堵した様子で、4人は出ていった。
「ネイリン、シャル、フランが困っているだろう?」
「違うわ。お兄様が過保護過ぎるからよ」
「そうよ、家族になるのだからいいじゃない」
「そうだが、まだ、尚早だと言っているだろ?見習いもまだ始まっていないのに、お前達が騒げば余計に心労が重なるだろう」
ため息混じりに言いながらも、2人に対する愛情を感じた。
肩を竦めながら、私達の前に座った。
「お茶をどうぞ」
イルシーバがようやくお茶が出せました、とばかりに凄い速さで並べていく。
「ああ!狡いわお兄様!!お義姉様の好きなお菓子ばっかり用意して、自分の株をあげようしてる!狡い!!」
アイシーが菓子の準備をし出すと大声をシャル様が出した。
「本当だわ!ケチな上に卑怯なお兄様だわ!」
「そんな事はない」
何だが得意げに足を組み、笑いだした。
「そんな事あるわ!その桃のタルトもナッツのタルトも、お義姉様が好きなのだ、とお兄様が言っていたでしょ。わざわざ料理長に作らせておいてよく言うわ」
「そうよ。私達だってだべたいもん」
確かに私の好きな菓子だ。でも、教えた覚えは無い。
そう思って気づいた。そう言えば、初めて王宮で食事をした時も、今日頂いたお弁当も私の好きな物ばかりで、苦手ものは1つもなかった。
あれは、偶然ではなく、私の好みを知っていたから?
「駄目だ。これはフランにの為に作って貰ったのだ。食べたいのなら、ふたりが頼めばいいだろ?」
「そんな事できないもん!これはお義姉様だけのレシピだと言われたもん!」
「お兄様のケチ!」
確かに、ケチ、だ。それも、私だけのレシピ、とは大層な事だ。
「ケチ、ではない。父上だって、母上の為だけの料理や菓子があるだろう」
「分けてくれるもん!お兄様はこの間も分けずに、残ったタルト1人で食べたじゃない」
「当たり前だ」
「じゃあこれも残ったら全部1人で食べるの?」
「当然だ」
至極真面目に即答した。
うん。ケチだわ。
「ふふっ」
とうとう我慢できず笑いが出てきてしまった。
「フラン?」
「ごめんなさい、ブライアン様が普通に兄妹ゲンカされてて何だが面白かったんです」
「そうか?フランもハーバルとよくするだろ?」
「うーん、あまりしませんね。と言うよりも、口でも頭の回転でも勝てないので、ケンカまでたどりつきません」
「お兄様の言う通り、のんびり屋さんだね」
「そうね。それにお兄様の言うように、とても雰囲気が優しいわ」
「それが、フランのいい所だ」
滑らかに言うブライアン様は、目を細め私に微笑んだ。
見たことも無い、安らぎに満ちたその顔に、胸が何だがこそばゆくなり頬が熱くなった。
「あ、あの、宜しければご夕食をご一緒しても構いませんよ。その時に、この菓子を皆で食べましょうよ」
これ以上ブライアン様を見ていると、ざわめく心に流されてしまいそうで怖かった。
「フラン無理しなくてもいいんだ」
「お兄様は黙っててよ。お義姉様がいい、と言って下さってるのだからいいのよ」
「そうよそうよ」
「大丈夫です、ブライアン様」
「そうか?フランがそう言うなら、アイシー侍従長に私とフランが皆と夕食を共にすることを伝えてきてくれ」
「かしこまりました」
「イルシーバ、この菓子を一旦片付け、厨房に持っていてくれ」
「かしこまりました」
「それからネイリンとシャルは部屋に帰りなさい。もういいだろ?」
「その手にはのらないもん。だったら、夕食までお義姉様とお話するもん」
「私も。お兄様ばかり独り占めするのは狡いわ」
しっかりと両腕をお2人は掴んで離さず、息のあった2人のあっかんべーに、また、笑いが出た。
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