17【ランレイ目線2⠀】
「その割には、お顔と声が優れませんわね。だって、お兄様には絶対に思いつかない事だと思い、助言してあげましたのよ。それに、私が勧めた先生はもともとは庶民に近い子爵のお家での出生ですが、由緒ある伯爵家に嫁いでいる方ですの。必死に勉強され、誰もが認める令嬢となり、伯爵家の令息に見初められたの。とても努力した方ですもの、きっとルミナ御義姉様と話が合うと思いますの」
「そこまで考えてくれたのか?」
あら、嬉しそうね。
「当然よ。単純明快なお兄様に頼んでも、肩書きしか見ないでしょうから、適当に選ぶと思ったの。上級貴族の令嬢、令息を教育している有名な方から探せばいい、と。貴族の悪い癖よね。生まれ育ちだけで判断してその方の資質を見ようとしない。でも、私は違うわ。ルミナ御義姉様の性格を理解し、行動を把握しています。まあ、お兄様は見ているようでみていないので、それが出来ないでしょうから、私が、あら、先程からどうされたの?何だかご機嫌斜めね」
上目遣いで睨んできている。
「いつも思うが、ランレイと話をしていると、私をバカにしているように聞こえるのだが気のせいか?」
「まあ、お兄様酷いわ!!カーヴァン家の唯一の跡取りであり、四大公爵家の当主となる方よ。その上私の大事なお兄様をそんな蔑ろにするような事も、見下す事もバカにした事もないわ。ただいつも、素直すぎて、前ばかり見ているお兄様を助けたいだけよ」
「・・・」
「どうされたのお兄様。なんだかいつも私とお話すると楽しそうではなくてよ」
「・・・1つ確認だが、ランレイは私を応援してくれているのだよな?」
「何故お疑いになるの、当然でしょう?お兄様とルミナ御義姉様が御一緒になったら、本当の御義姉様になるのよ。これ程嬉しい事はないわ。でもね」
そっと首を傾げお兄様を上目遣いで見た。
「でもね?」
「保険の一つや二つ用意はしておくべきでしょう。お兄様が上手くいかない場合もあるでしょう。その時は私、来年高等部にあがりましたら、ジャン様と婚約出来るようにお父様にお願いするつもりよ。だから、お兄様が失敗しても私だけは、ルミナ御義姉様と離れる事は無いわ。公爵の娘を娶るんですもの、あちらも文句もないでしょうし、私の事をことの他大事に扱い悠々自適に過ごせるうえに、ルミナ御義姉様と何時でも側にいれるわ。その時はお兄様は適当な方と幸せになればいいのよ」
「・・・」
苦虫を噛み潰したような顔で睨んできたが、放っておいて召使いに目配せすると、1枚の紙を机に置いた。
「お兄様、どうぞ」
「なんだ?」
「週末出かける約束をされているのでしょう?カーヴゥン家が催す全ての祝い事の度に、ルミナ御義姉様の為に特注のドレスを毎年御用意されていたのは知っております。その特注のドレスの仕上がりを確認する為に、お2人でデート、と言う浅はかな考えをお持ちでしょう?」
「・・・その通りだ」
あら、認めている割には納得いかない顔ですわね。
「やはりね。でもお兄様の事ですから仕立てたドレスが世界一ルミナ御義姉様に似合う、とか何とか在り来りの言葉を言い、後はルミナ御義姉様の好きな品物を買ってあげておしまい、と言う単純明快な自己満足で終わるでしょうから、そんな勿体無い事はさせませんわ。私の誕生日パーティーには、お兄様の好みのドレスを自己満足のように着せ、ご自分だけが目の保養されるのでしょう。ルミナ御義姉様の事ですから、気を遣いお兄様の言う通りにされるでしょうね」
「・・・」
「ルミナ御義姉様が可哀想。きちんとルミナ御義姉様の好みに変えて差し上げてよ。あと、今流行りのスイーツが頂けるお店も書いておきましたからご一緒に楽しんで来てください。勿論、ルミナ御義姉様の大好きなタルトの美味しい店ですわ」
「・・・すまない」
「いいえ、宜しいですのよ。全てにおいて先々を見越して動かなければ意味がありませんわ。お兄様は、カーヴァン家の事の先々しか見ないのは知っておりますので宜しいかと思いますよ。跡取りですものね。ルミナ御義姉様はその次ですものね」
「それは言い過ぎだ。私はルミナの事がこの家よりも大事だ」
「当然でございましょう?わざわざ口に出して言うのは愚問ですわ」
妙な沈黙が流れた。
「・・・お前と話すと何故だが、とても疲れるのだが」
「あら?そうですの?寝不足では無いのですの?」
ニッコリと微笑むと片眉を釣りあげ、口角を下げるお兄様は、ため息をつき諦めるように首を動かし、お茶をのんだ。
お兄様で遊ぶのは、今日はこれくらいにしておきましょうか。
十分楽しめたわ。
「それで、これからどうされるのですか?ルミナ御義姉様を上手く言いくるめて、恋人になられたのは拍手喝采ものですが、その後の詰めは甘くありませんよね?」
「当然だ」
これまでの呆けた皮を脱ぎ去り、野獣の眼差しで私を見た。
「では、お手並み拝見と参りますわ。でも、私はお兄様が失敗しても痛くも痒くもございませんからね」
にっこりと、心のままに素直に答えて差し上げたのに、合点がいかないとまた顔をしかめた。
「お話しは終わりですよね?では、さっさとご自分のお部屋にお帰り下さい。それと、この召使いに手当を忘れないで下さいね。それと、ご自分の失態ですのに、くだらない愚痴を聞かされる私達の身にもなって下さいね」
微笑むと、お兄様はまた不機嫌に睨むと、静かに返事をし部屋を出て行った。
少し虐めすぎたかしら、と最後のお茶を飲み干した。
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