第14話※

アトラスは私の上唇、下唇ついばむように動き、遂にはにゅるりと口内に入ってきた。

襲ってきた舌がまるで対を探すように蠢き、見つけ出し絡め取らた。

「ふっ、ん・・」

唾液が一気に溢れ、アトラスの舌が絡みつき吸い上げられ、身体が痺れるように腰が浮き上がる。それを引き止めるかのように、腕が私を強く抱き寄せ、更に淫らに動く舌は深くなる。

初めての深い口付けで、息の仕方が分からず苦しくなり、胸を押して離れようとするがびくともせず、逆に押し倒されてしまった。

「・・・んん」

筋肉質なアトラスの胸は硬く、押してもびくともせず、逆に力強く抱き寄せられ、より一層密着し、苦しいのに、何故か心地よく感じてしまう矛盾に戸惑い、身体の何処かが疼くような不思議な気持ちになった。

アトラスの胸の中で身悶えていると、やっと解放してくれた。

「ふぁ・・・」

肩で息をし、呼吸を整えながら、潤んだ瞳でアトラスを見上げると、いつもの優しい笑顔を向け、口端から顎に伝う、どちらのものかも分からない、混ざり合った唾液を舐めだした。

「やっ、アトラス、もう・・・やめて・・・」

くすぐったいような、感じた事のない感覚に身体が震え、これ以上されるとどうにかなってしまいそうだ。

「だって、私が汚したんだから綺麗にしないと」

ざらりと舌の感触が肌の上を滑る。

「拭けばいいで、しょ」

「勿体ない」

「汚いよ」

「甘いよ。とても。口付けとは違う味がするよ」

「っ!」

首筋舐められ、身体がビクリと跳ね上がった。

それを楽しむように、アトラスは執拗に舐め続けた。

「やっ・・・」

もう、何が何だが分からなかった。

「その声は、逆効果だよ。そんな声聞くと男は、辞めたくないと思ってしまう。特に私はルミナの声を聞きたいから、もっと意地悪したくなるな」

そう言うとひと舐めし、アトラスはスカートに手を忍ばせ太腿を触りだした。

「ひゃっ!ア、アトラス、お願い、待って!もう、許して」

慌てて止めようとアトラスの腕を掴み、足をばたつかせると、私を起こし笑いだした。

「ごめん、ルミナの反応が可愛くて、楽しくてやり過ぎた」

「酷いよ!凄く驚いたよ。アトラスの口付け、し、舌使いがとっても上手いし、アトラスもしかして、遊び人だったの!?」

「違うよ。ルミナが初めてだよ。上手いと思って貰えたのは嬉しいな。相手がルミナだから私もドキドキしたけど、ルミナが私にとって特別な人だから、ね」

特別と言われ、嬉しくもあり恥ずかしくもあり、相手がアトラスだと分かっていても、先程の濃厚な口付けが頭から離れなくて、まともに顔が見れなかった。

「今日はここまでにしようか」

「うん・・・初めから飛ばしすぎだよ」

「ルミナが魅力的だからだよ」

「嘘ばっかり」

「私はルミナに嘘をついた事はないよ」

アトラスは私の頭を優しく撫でた

「さて、帰るよ。そのプリライ家のバカ女が何かしたらすぐに教えて」

穏やかな声でそんな事をたまに言うから笑ってしまう。

「そんな汚い言葉アトラスには似合わないよ」

「そうだね。じゃあお別れの口付けは私の頬にしてくれるかな」

口付け、という響きに胸がキュンとなり戸惑っていると、アトラスが自分の頬を近づけてきた。恥ずかしかったが、アトラスの頬に軽く口付けた。

すると、アトラスが私の腰を引き寄せ、耳元で甘く囁いた。

「ありがとう」

そう言うと、私を離し、優しく微笑んだ。

「見送りはいいよ。また、明日」

「うん、そうだね。じゃあね」

「おやすみ」

柔らかに言うと立ち上がり、部屋を出て行った。

私は、はぁぁ、とソファに突っ伏しギュッとクッションを抱きしめた。

先程のアトラスとの口付けと熱い眼差しがまだ頭の中を巡り、身体の奥が熱くなった。

そして、アトラスの色気を思い出し、身体が疼き出した。

こんなのおかしい。

アトラスを意識しすぎて、どうにもならなかった。

これまで1度としてアトラスを意識したことはなかった。

小さい頃はよく一緒に遊んでいて、アトラスを異性と認識していなかったからだ。

アトラスも妹のように接してくれていたと思っていた。だから、おままごとで口付けもしたのだ。それが突然、口付けされ、戸惑い、どうしていいのか分からなくなった。

この気持ちは何だろう。

今まで経験した事がない感情だった。

ううん。これは、そう!恋人同士のおままごとなのよ。

アトラスは裏では女性関係が豊富で慣れているから、私の為に付き合って、また、経験を増やしていく気なんだわ。

きっと、そうに違いないわ。

高鳴る心臓と戸惑う己に、必死に言い聞かせたが、そう思うと何だかお子様扱いされている気分になり悔しい気持ちにもなった。


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