第2話

私、ルミナ・オルファ、17歳。薄茶色の髪に、緑の瞳の平凡な容姿だ。子爵の娘として産まれた。爵位的に、財政的にも裕福ではなかったが、父と母、そしてお兄様2人はとても優しく、そんな家族に囲まれて幸せだった。

私には2人の幼なじみがいる。

1人はお母様の親友の子供、グロッサム・アーヴ、伯爵家の次男だ。18歳で同じ学園に通っている。

はっきりとした顔立ちで、赤茶色の髪に茶色の瞳を持ち、とても元気で明るい性格をしていて、女性にとても人気がある。

お母様同士がよくお茶会を開催し、お互い連れて行ってもらっていたから、幼い頃からよく遊んでいた。

もう1人は、お父様の親友の子供、アトラス・カーヴァン。18歳で王立学園に通い、私とは世界の違う公爵の嫡男だ。

銀色の髪に青い瞳を持つ、とても綺麗で優しい顔の立ちで、とても優しい人だ。

お父様が家督を継ぐ前に役所に勤務していた時に、アトラスのお父様と知り合いとても意気投合し、家督を継ぎ役所を辞めた後も、いつの間にか家族ぐるみのつきあいになっていた。

中等部入った時に、お母様がどちらかと婚約したらどう?

と聞いてきた。

私はすぐにグロッサムと答えた。

幼い時から元気なグロッサムにとても惹かれていたし、爵位的にも伯爵家なら、私と釣り合うと思った。

グロッサムも、特に嫌がる様子も無く、すんなりと決まった。

アトラスは優しすぎて、私にはもの足りなかったし、公爵の嫡男なんて恐れ多い。

それなりに己の立場を考え答えたが、何故かお父様もお母様も困惑したのを覚えている。

ともかく、婚約が決まってからは、アトラスは距離を置くようになった。婚約したのなら、他の男性と仲良くするのは何を噂されるが分からない、そう言いとても私に気を遣ってくれた。

だが、私にすれば、公爵令息であるアトラスに私のような子爵の娘と噂になる方が申し訳なかったから、丁度良かった。

アムルは、私と同じ17歳。プリライ伯爵家の二女だ。

金色の髪に赤い瞳と、女性的な豊満な肢体をを持ち、高すぎる矜恃をもっている。

王立系の学園には王族の血筋、上級貴族、由緒ある血筋、もしくは他国の王族の血筋、つまりは高潔な地位のみを有する令息、令嬢が通う事を許された。

特別待遇として、抜きんでた頭脳ををもつ者だけが特別枠として入学を認められる程だった。

そこにアトラスは通い、当然私は通う事を許される筈がなかった。

だから私は、平民達も通う国立系学校に通い、そこでアムルと出会った。

小等部の頃から一緒の学園になったが、歳が上がるごとに私を気に入らないようで、嫌がらせをしてきた。

何故だかは分かってる。

私の方が成績がよく、一度も勝てないからだ。

私はいつも上位にいた。

大概上位いるのは裕福な家で、有名な家庭教師を雇い、アムルもそのまたその1人で常に上位にいたが、一度も私に勝てなかった。

実際プリライ伯爵家は貴族の中でも上位の地位にいる。

そなのに、子爵程度の私に負けているのが気に入らないのだ。

たかが、と思うだろうがそんなに些細な事でも、許さない異様なまでにアムルは執着心と嫉妬深さ、独占欲を持っている。

だからと言って婚約者を奪うなんて常識では考えられない。

だが、あの時のあの顔は、優越感に満ちていた。

私がグロッサムを好きなのは知っていた。

いや、でも、本当に2人は愛し合っているのかもしれない。

私の嫉妬心がそう見せただけで、あの笑いは幸せの笑いだったのかもしれない。

私がグロッサムを好きな気持ちと同じように、グロッサムも私を好きなのよ、と思い描いていただけなのかもしれない。

けれど現実は私は、こんなにも胸が切なく苦しくて好きなのに、

グロッサムにとっては、ただの幼なじみでしか無かったのだろう。

私と、

貴方の、

側には、

違う人がいる。

私は貴方を願っていたのに、

貴方には、私ではなかった。

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