蘇る記憶
あぁ…そっか。全部思い出した。私…死んでたんだ。2年前くらいに彼氏と喧嘩して家を飛び出て事故にあって…そのまま。そんな死に方をしたから未練タラタラで…幽霊になってずっと彼のそばにいたんだった。
私が悪夢だって…思ってたのは、私が死んだ時の話だったんだ…
あれ?じゃあ、あの『お前のせいだ』って言うのは…?
色々と頭が混乱して整理がつかなかった。幽霊になっても夢は見るみたいだ。死んだのは私の方で…ずっと彼のそばにいて…現実だと思っていた過去にすがりついていたんだ。
霊媒師がこちらを見てニコッとする。
「彼氏さん…あなたの"元"彼女さん、自分が幽霊だって気づけたみたいですね。」
「あぁ…そうですか。やっと…やっと解放される…」
解放…?いや、それもそっか。私は2年間無意識に彼を束縛し続けてきたのだから。
2年も経てば、普通恋心なんて冷めてしまうよね…でも、私は死んでもあなたの事を想い続けていたのにひどいわ。あなたが言ったのよ?君が死んでも想い続けるよって。
私の心がドロドロしているもので満たされていくのを感じる。あぁどうしよう。私が成仏してしまえば…目の前の霊媒師にお祓いの手立てを彼が聞いてしまったら…この先彼は私の知らない女と愛し合っていくってこと?
そんなの許さない。私にはあなただけなの。それは私が死んでいたって生きていたって変わらないこと。でもあなたは、死んだ私の事なんて忘れて新しい彼女でも作って私以外の女と結婚だってするかもしれない。ダメ…そんなのダメよ。…そっか。こうすればずっと一緒にいられる?
私の頭の中に1つの案が浮かんだ。私は幽霊なのだから、なんだってできるはずだ。
ふふ…あははっ!そうよね、彼にとってもこれが1番"幸せ"なはずよね!ごめんね…気づいてあげられなくて、あなたを疑ってしまったわ!
私の心はもう真っ黒だ。でもとても清々しい気分だった。これが世間に言う悪霊なのかもしれない。でもそれでもいい。彼にとってもこれが"幸せ"に決まってる。
私は霊媒師の方を見る。そして1つ芝居を打つ。
『ぐすっ…私やっと気づけました…今まで2年間も彼を縛り続けて…本当に申し訳ないです。ただ…1つだけ最後に私のわがままを聞いてくれませんか?』
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