第15話 筋肉筋肉筋肉!
コラボ当日。
俺はジムの様な場所に呼ばれた。
「あ、こんにちは」
「こんにちはっ!!!」
声がでかい。
もうね、すんごいデカい。
長く聞いてると鼓膜が破れそうな声だ。
「自己紹介から始めましょう!ボクの名前は
涎を垂らしながらこちらを見つめる鎌倉さん。
えっと……目がガチそうで怖いんだけど……。
あ、ちなみに鎌倉さん、いかついチャンネル名からてっきり男だと思ってたけど中身は俺と同じくらいの背丈の女性だった。
コラボという事で、俺は鎌倉さんの過去の動画を見てみたのだが、ダンジョン内を徘徊し、屈強な男性冒険者を捕まえて、カッコいい衣装を仕立てるという物だった。
えっと、こんな説明では何を言ってるのか分からないと思う。
俺もそうだからね。
でも、本当にこの通りなんだよね。
先ず、ダンジョン内を徘徊する→分かる。
屈強な男性を捕まえる→まだ、分かる。
カッコいい衣装を仕立て上げる→は???
いやね、本当にこの通りなのだ。
チャンネル説明には一言『筋肉はすべてを解決する』という文言があり、すべてを物語っている。
正直意味不明だ。
それに、どうしてこんな動画に登録者が50万人も居るのかはもっと意味不明だ。
最近の若者はこういうのが好きなのか?
いやいや、俺も若者だしな……うん、分からん。
でも、彼女の作った衣装はすべて等しく素晴らしかった。
どれも着用者の筋肉を引き立て、カッコよくしているのだ。
やはり、登録者50万人とだけあって腕は確かだった。
これだけ登録者数が居るのも納得である。
まあ、普通に凄い人だった。
それが事前に彼女の動画を見た感想だ。
「えっと、俺の名前は
「……何を言っているのですか?あなたの筋肉は素晴らしいです!」
あ、ダメだこの人。
会話が成り立たない。
頭の中まで筋肉が詰まってる。
俺と同じ150センチ程の背丈で華奢に見えるけど、腹筋がバッキバッキに割れているのがシャツ越しに透けて見える。
「そんなに心配しなくても大丈夫ですよっ!ボクのリスナーはあなたの筋肉を受け入れてくれますから!」
「は、はあ……」
宗教かよ。
筋肉を受け入れるて……。
でもまあ、この人は登録者数が50万人も居て、腕もあって、確かに凄い人だ。
それにあんまり悪そうな人に見えないし……?
まあ、大丈夫だろ。
「とにかく!早く配信を始めましょう!早くあなたの筋肉を見たいんです!」
うん、やっぱりダメかもしれない、この人。
▽
そんなこんなで暫しの挨拶の後、配信が始まった。
鎌倉さんは、配信ではマスクを被るらしく、マスクを被っての配信だ。
さらには分厚い冒険者ローブを纏っているため、画面越しだと性別が非常に分かりずらい。
だから、鎌倉さんは会ってみるまで性別が分からなかったのだが……
「どうも!皆さんこんにちはっ!」
:筋肉!(挨拶)
:筋肉筋肉!
:肉肉!
:筋肉筋肉!
:筋肉!
コメントが凄まじい速度で流れる。
登録者が50万人というだけあって、とんでもない量のコメントが数秒で流れてくる。
これが50万の世界なのか……なんて思ったのだが、コメントの内容はどれもヤバめの物ばかり。
あれ?もしかして俺来るところ間違えた?
「今日は、素晴らしいお友達を呼んできました!ほら、自己紹介をどうぞっ!」
:お友達(犠牲者)
:楽しみワクワク
:可哀そうに……
:筋肉大好きマンに見つかるなんて……相当運がないように見える
:誰だ?
「ど、どうもー、REさんでーす」
”REさん”は俺の配信者名義だ。
:可愛いじゃん
:え、珍し
:筋肉!
:そうか、君も筋肉の道へ……(手遅れ)
:筋肉こそ全て!
:あたらしい同志が増えた
:よ う こ そ
なんかさっきからコメントが不穏な物しか流れてこないんだけど……。
というか、鎌倉さんからコラボで何をするかとか伝えられてないんだけど、何をするんだろうか。
「では、早速準備しましょうか!」
「ん?準備ってなんの準備ですか?」
:あ
:何も知らされてないw
:実家の様な安心感wwwww
:またしても何も知らないコラボ先w
:いつも通りの光景www
:草
「えっと、ボクのチャンネルでは服を仕立てるというのは知っていますよね?」
「ええ、知ってますけど……」
「ボクは服を仕立てる人間と手合わせすると、その人の筋肉の事が分かるんです。所謂テレパシーってやつですねっ!だから、コラボする時はコラボ先の人と手合わせするんです!」
「は、はあ?」
:テレパシーw
:電 脳筋www
:コラボ先の人引いちゃってんじゃんw
:新しい犠牲者が……
:何回聞いても手合わせで筋肉が分かるって意味不明
:仕方がない事かと
:ふふふ、誰もが通る道さ……
:そんな道、無くなった方が良い定期
いやいや……え?
テレパシーて……え?
ちょ、マジで何を言ってるのか分からないんだけど。
「さあ、準備しましょうか!」
:ワクワク
:いつもの屋根
:テカテカ
え、これいつもの光景なの?
俺一人だけこの状況が分かってない感じ?
「えっ、マジでやるんですか?」
「マジもマジですよ……ふむ、どうやらREさんはまだ頭で考えているようですね。Don't think, feel your musclesですよ」
:うっざ
:無駄に発音いいの草
:考えるな、筋肉を感じろw
:マジでうざくてw
:wwwww
すると、どこかから剣を取り出す鎌倉さん。
「はいっ、これがREさんの剣ですよ。使ってください!」
「え、あ、はいっ!?」
「では、始めましょうかっ!」
え?
マジで始まるの!?
戸惑っていると、先手必勝とばかりに鎌倉さんが地面を蹴り、こちらへ詰めてきた。
……これは、不味いっ!!
「スキル発動!」
スキル発動と同時に、背中から流体化した筋肉が飛び出す。
飛び出した筋肉は壁に張り付き、そちらへ体を引っ張る。
「うおっ!」
「おお、それがあの筋肉ですかッ!」
:なにそれ
:初めて見るスキルw
:回避に使うのか
:見たことないタイプのスキルや
先ほどまで俺が居た地点に鎌倉さんは剣を刺した。
あれは、当たってたら不味かった。
……どうやら鎌倉さんはやる気の様だ。
これは、あれこれ言ってる場合ではないな。
「……少し、本気を出しますね。痛い目を見ても知りませんよ?」
「良いですね、良いですね!楽しいですね!!!」
:面白くなってきちゃ
:かっこいw
:イケメンじゃんw
そして、俺は剣を構えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます