第10話 ゴミスキル
もぎゅもぎゅ
もっちゃもっちゃ
ゴクリ
うん、不味い。
スライムと同じく、ゴブリンもとても不味い。
何というのだろうか……まるでゴムを喰っているみたいな感じなのだ。
嚙み切れない弾力、そして吐き気のする臭さ。
思わず戻しそうになってしまうが、気合で飲み込む。
「まっず、人間が喰うもんじゃないですね」
:だろうなw
:明らかに人間が喰っていいもんじゃない
:見た目からして不味いwww
:本当に魔物を喰ってスキルを得られるんだ
やっぱり、コメントの皆も合意らしい。
こんな魔物の肉なんて好き好んで喰うのなんて俺くらいだろうな。
まあ、喰ってスキルを得れるというのならば喰わなきゃ損だしな。
魔物の肉がクソ不味いという欠点を除き、スキルを得られるというのは破格の能力なのだ。
やっぱ、【解析】っておかしいのだ。
『スキル【捕食】による解析開始……成功』
そんなこんなでゴブリンの肉を喰ったのち、しばらくぷらぷら待っていると、脳内に声が響く。
『解析結果……以下のスキルを獲得
【筋肉質】……体の一部を筋肉質にする』
んん?
なになに、得たスキルは……【筋肉質】、と?
まあ、確かにゴブリンは筋肉質だしな。
喰った肉もすんごい筋肉質だった。
能力は、体の一部を筋肉質にする、とあるのだがどういう事だろうか。
本当に筋肉質になるのだろうか。
だとしたら結構便利そうなスキルっぽいのだが。
そんな事を視聴者の皆に共有する。
:筋肉質って直球な名前だな
:試してみて
まあ、実際に見てみないと分からない。
俺はスキルを実行した。
『スキル【筋肉質】を発動』
……。
…………。
あれ……?
何も起こらなぞ?
不発か?
もう一回試してみよう。
『スキル【筋肉質】を発動』
……あれ?
やっぱり何も起こらない。
:どうした?
:何があった
:何も起きない?
「……んー、はい、何も起こりませんね」
どういうことだ?
今まで、スキルを発動したら、何らかの反応があったはず。
流体化も、擬態も、解析もどれもスキルを発動したら何らかの変化があった。
しかし、この【筋肉質】というスキルは発動しても何も起こらない。
なにが違うのだろうか……?
「ちょっと、待ってください、少し考えますので」
:おけ
:俺たちも考える
:待ってるは
▽
「あ、分かりました。どうして反応しないのか」
:マジ?
:どうして?
かなり時間がかかったが、考えてみれば簡単な事だった。
そう、とても簡単な事だ。
スキルは一部を筋肉質にする、という説明があったではないか。
説明があっても、使用方法は分からないという典型的なパターンだ。
どうやら、このスキルは筋肉を筋肉質にしてくれるという訳ではないらしい。
スキル名が罠だったのだ。
スキルを発動すると筋肉を増強できるって感じだと想像していたのだが、実際はそんな便利なスキルではない。
まあ、そう考えると筋肉質ってスキル名も納得なんだけどね。
要は、こういう事だ。
『スキル【筋肉質】を部分発動』
スキルを発動すると、右手の小指の爪がモリモリと肉みたいなのに覆われていく。
スキルを止めると、筋肉が縮小して爪が表れる。
:ん?
:ああ、そういう事だったのか
:どゆこと?
「えっと、簡単に説明すると、この【筋肉質】というスキルは筋肉じゃない部位を筋肉にするってスキルですね」
:つまりは?
「つまりは……ゴミスキルって事です、はい」
そう、本当に残念なのだが、このスキルはお世辞にも強いスキルとは言えない。
なにせ、筋肉ではない部分を筋肉にするという使いどころが全く思い浮かばないニッチな能力だ。
どこぞの能力漫画でも、序盤で噛ませ犬として出てくる敵の能力だ。
まあ、仕方ないね、だってゴブリンから得たスキルだもの。
:ゴミスキルか……
:スキルを得るってのも上手くいかないものなんだな
:やっぱダメか
「いやー、でも、何か使用方法とかないですかね……」
:流石にないと思うよ?
:無理じゃない?
:筋肉じゃない場所を筋肉にするとかいうゴミ
:諦めて次のモンスターに行けば?
「んー、でもなー、何か良い使い方がある気がするんですよ」
筋肉じゃない場所を筋肉にするスキル、か。
……使いどころが全く思いつかない。
だってさ、筋肉じゃない場所をわざわざ筋肉にする必要があるか?
否、わざわざ筋肉にする必要なんてない。
まさしくゴミスキルの名にふさわしい。
まるで俺の【捕食】みたいなスキルだ。
胃を強靭にして、魔物を喰えるようにするという、どこで使うのかサッパリ分からないスキルだった。
まあ、【解析】により、喰った魔物を解析してスキルを得るって使い方が出来たのだが……この【筋肉質】は解析先生にお願いして上手い使い方をするなんて事、出来そうにないしな。
ん?
あれ?
【捕食】は【解析】により使い道を得た?
んー……?
「あっ!」
と、その時だった。
脳内に天才的なアイデアが降り注いだ。
:どうした?
:思いついた?
:早い
「わざわざ【解析】に拘る必要はないんだ!」
そう、わざわざ【解析】に拘る必要はないのだ。
俺が現状持てるスキルは【捕食】【解析】【流体化】【擬態】【筋肉質】の五つ。
という事は、スキルの組み合わせが出来るという事。
すなわち、一つのスキルに固執する必要はないのである。
思いついたアイデアを解析先生に伝える。
(どうだ?出来そうか?)
『……出来ますね。早速実行しますか?』
よしよし、解析先生曰く出来るそうだ。
ならば善は急げだ、早速実行してくれ!
『スキル【流体化】と【筋肉質】を同時発動』
「おお、おおお、おおおおお!?」
次の瞬間、体が溶けた。
しかし、あの時と同じように完全に液体化して、動けなくなるという訳ではない。
こんどはもっとしなやかに、強靭に液体化した。
:え!?
:マジかよ!
:すご!
:出来るの!?
:これは考えましたねぇw
「これなら、液体化で自由に体の形を変形出来て、筋肉質で自由に変形した体を動かせる!」
まあ、あれだ。
つまりはヴェ〇ムみたいな感じに動けるようになったって事。
もっと戦闘の幅が増えた。
しかし……これ、よくよく考えてみるとヤバいな。。
流体化により服がはだけ、全身をびにょんびにょんしながら人間離れした動きをする27歳の美少女……。
えっと、うん、なんかヤバいな。
属性がてんこ盛りすぎる。
健全じゃない。
実に健全じゃない。
流石に服がはだけない様に、使用部位は限るか……。
ま、まあ、ともかく、こうして俺は多少問題はありながらも新しい戦い方を見つけたのだった。
うん、良いことだ。
えっと、良い事なんだよね?
誰か、良いことだと言ってくれ!
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