第8話 ホラーすぎる!
ダンジョン一階層のとある場所にて、俺はスマホの画面を向き合っていた。
そう、配信をしていた。
どうしてこれまた急に配信を始めたのか?
その理由は至極簡単だ。
住所が特定されそうだったから。
いや、配信したらもっと悪化するやろ、って思う人も居るだろう。
俺もそう思う、すんごい馬鹿だよな……。
でもな、そのまま放置してたら何も問題は解決しないのだ。
逃げたら1つ、進めば2つ、って偉い人も言ってた。
あれ?その偉い人不味い人じゃなかったっけ?
ま、まあ気にしなければ問題ナシ。
なんて馬鹿な事を考えたりしているが、俺なりに割と真剣に考えてこうしているのだ。葉上に教えてもらったのだが、俺の写真が出回っている場所は主にネット掲示板らしい。
ん?どうして葉上は俺の写真がネット掲示板に出回ってること知ってたんだ? もしかして葉上は俺の写真が出回ってるスレッドを徘徊していたのでは、なんて若干ホラーチックな事に気づいてしまったが、怖いので考えないようにしておく。
話が逸れたが、どうやらネット掲示板の人たちが俺のことを探しているという事だ。
そして、彼らは俺の正体?を知りたがっているらしい。
謎の美少女の正体は魔物なのか、それとも人なのか?
みたいな感じだ。
ま、まあ、一部の人間は俺の事を性的な目で見ているらしいが、怖いね、ネットの人って。スワ〇プマンみたいなのが好きってどんな性癖なのやら……。
という訳で、俺の事を探っている彼らに、俺自身が真実を告げれば、興味を無くし今後彼らが俺のことを捜索する事はなくなるだろうという魂胆のもと、配信しようと考えたのだ。
「あ、ども、一般人です」
:一般人w
:開口一言目が一般人なの草
:はい?w
そんなこんなで、俺は配信を始めていた。
久々の配信なのか、若干緊張しているが、そのうち慣れていくだろう。
あ、ちなみに配信アカウントは新しく作ったぞ。
前のヤツをそのまま使って配信すると、”寄生されてる!”なんて視聴者に思われて不味い事になるからな、本当に惜しいが前のアカウントは放棄した。
「えーっと、あー、あー、聞こえてますかー」
:聞こえてるよー
:声、可愛いな
:主本当にあれじゃん
よし、マイクはちゃんとしているようだ。
「はい、という訳で配信を始めていこうと思います」
:ワクワクテカテカ
:真実が明かされる……
:主が想像してたのより100倍くらい可愛かった
:人間じゃん
そうして配信が始まった。
▽
「えっと、早速本題に入ろうと思いますが、皆さん、俺を捜索しないでください!」
:炎上者の叫び
:いや、草
:知ってたw
:捜索しないでくださいは草
:wwww
「最近、こんな写真がネットで出回っているのを発見したんですが、これ、俺なんですよ」
スマホの画面で、俺が映っている例の写真を映す。
:うん、そうだね
:一人称俺?
:確かにそうだ
:一致してる
「どうやらみんな、俺が新型の魔物なのか、それとも人間なのかって知りたがっているようだったので、この際言いますが、俺、人間です!!!」
顔面にスマホを近づける。
:近い近いw
:言葉を喋ってるってだけで人間だと思うなよw
:ワロタwww
:え、じゃあ、あれ何だったの?
コメント欄が凄まじい速度で流れていく。
あるえ?
元々俺が配信してたアカウントではこんなに早くコメントなんて流れなかったぞ?
なんか、凄いな。
なんて考えつつ、手をおもむろに上げた。
「ちょっと見ててください」
そして、スキルを発動する。
『スキル【流体化】を部分発動』
脳内に声が響くと同時に、手が指先からドロドロと溶けてゆく。
しかしながらあの時と同じではなく、手だけが溶けてゆく。
あの後いろいろ研究してみたのだが、肺まで溶かすから問題なのだと気づいた俺は、解析先生に部分的に発動できないかと訊いてみると、『出来ますよ』なんて言われた。
なのでこうしてスキルの効果範囲を絞り、部分的に発動することにしたのだ。
:おお!?
:溶けてる
:めっちゃ変形してるじゃん
:スキルでこんなに体の形って変えられるん?
:すげえな
:マジやんけ
:え、でも動画で見たのだともっと溶けてなかった?
「もっと溶けますよ?でも、肺まで溶かすと呼吸が出来なくなるからやりませんが」
そう言いながら、スキルを解除し、手を元の形に戻す。
:なるほどね
:そういう事だったのか
「まあ、今のを見てもらった通り、俺はこうして体を溶かす【流体化】ってスキルを持ってるんですよ。で、俺は魔物を喰うと魔物のスキルを獲得することができるんです。この【流体化】もスライムを喰って入手しました」
:なるほどなるほど
:流体化ってスキルなんや
:!?
:は!?
:!!!!?????
:魔物を喰ってスキルを獲得!?
:サラッとヤバい事言ったな
:前代未聞じゃね?
ん?
あれ、なんか俺不味い事言ったっぽいな。
流石に【解析】のことを言うのは不味いと思って隠していたのだが、魔物を喰うとスキルを入手出来るってのはセーフかなって思ったんだけど、どうやら不味かったっぽい。
……訂正するか?
いや、下手に訂正したらしたらで変な勘違いも生みそうだな。
ここは普通に話を進めるか。
そう判断した俺は、一間置いたのち再び口を開く。
「えっと、そんな感じです。俺は至って普通の人間ですので探さないでください。はい、話は以上です」
:え、ちょ、待って
:魔物を喰うってどう言う事?
:これで配信終わり?
:主、可愛いからもっと配信して欲しい
:二度と配信しない感じ?
「ん?まあ、そうですね、この後の配信の予定なんてないですし、多分配信しないと思います。あ、そろそろ配信切りますね」
あー、そろそろ疲れてきたし配信切るか。
こんなに喋ったのも久々だしね。
そうして俺が配信を切断しようとした時だった、
:待って!
:せめてもう一回だけ配信して!
:スキルとかなんだとか気になる事が多すぎる!
:スパチャするから配信してクレメンス
:めっちゃ気になる
:主、可愛いし配信したら絶対バズると思う
ん?
そんなに俺に配信して欲しいのか?
みんな物好きだな。
俺みたいな一般人Aの配信がそんなに気になるのか?
でもなー、配信するの疲れるんだよな。
一回死んで、あのアカウント使えなくなってフォロワー全部消えたし。
超萎えてんだよな。
どうしよか。
まあ、でもな、多少はサービスしてやってもいいだろう。
「……そうですね、フォロワー1万人越えたら配信しますよ」
あれだ。
前の俺のアカウントのフォロワーが1万人。
それを超えられたらもう一回配信をしよう。
:おおおおおおおお!!!
:キタコレ!
:やるか!
:言ったな(満面の笑み)
:本気出すか
:我々の本気を甘く見るなよ?
:wwwww
あるえ?
なんか熱い風が吹き始めたぞ?
俺、不味い事を言っちゃった?
▼
えーっと、はい、あれから寝て起きてスマホ見たらフォロワー1万人超えてました。
正直、予想外だ。
たった一夜でこれだけフォロワーが増えてるんだぞ?
普通に怖いわ。
ホラーだわホラー。
いい年こいた大人たちが必死に画面に向かってフォローしてくるんだぞ?
うん、ネットの人って怖いね。
何をしているんだか。
とまあ、こうして俺は配信することになった。
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【あとがき】
少しでも面白いと思っていただけましたら、レビューとフォローをお願いします。
作者の大きなモチーベーションになりますので、していただけますととても嬉しいです!
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