魔族の少女との出会い
世界不戦条約が破棄されるか否かの瀬戸際にあることなど知る由もないユウマとルルは、森の中で大量の小さな魔物に囲まれていた。
「いやぁ探知魔法を使っておくべきだったな。すぐ終わらせるからルルは木の上で待ってて!」
次々とユウマに襲い掛かる魔物たち。
その正体はデスラビットの群れだ。
名前は恐ろしいが、見たところ白オーラの個体ばかりのようだし、オーバードライブを使うまでもなさそうだ。
「ほい!ほいっ!ほいほいほほい!」
達人レベルじゃなければ見逃してしまう速度の手刀で、次々とデスラビットたちを気絶させていく。
「ふぅ。ルルー終わったよーー!村の人達に体術を教わっていて助かったなぁ」
それにしてもデスラビットたちは随分と気が立っていたようだけど何故だろう?
縄張りに踏み込んでしまい怒らせちゃったのかな……
とにかく気を取り直して先に進もう。
先程の反省を活かしさっそく探知魔法を展開することにする。
『シャロック!!』
この魔法は俺のオリジナルだけどすごく便利だ。
半径500mほどのエリア内に存在する生物の他、悪意のようなものだったり、自分の探したいものも感知できるため、仕掛けられた罠とかも見つけられる。
まぁただの虫とかは除外してるけどね。
そうこうしている内に複数の気配が探知に引っかかった!
1つの気配は……感じたことのない気配だけどたぶん獣人とかエルフか?
残りのもう2つの気配は……エビルボアだ!!
コイツらが近くにいたせいでデスラビットたちは気が立っていたのか。
「ルル!誰かがエビルボアに襲われてる!助けに行こう!」
道なき道、草木をかき分けながら反応があった場所へ急ぐ。
故郷の村、シックザールの近くに出た個体と同じように凶暴化したエビルボアだったとしたら、かなりの実力者じゃなきゃ撃退は難しい。
よし!だいぶ近づいた……
「おーーい!でか猪ぃぃいーー!!俺が相手してやるぞーー!」
エビルボアの気をこちらに向けるためにわざと大声を出しながら向かう。
正面の背の低い草木を飛び越えると少しひらけた場所に出た。
ユウマの大声に上手く警戒してくれたのか、2体のエビルボアがこちらを鼻息荒く睨みつけている。
その2体の奥にある巨木に力無く寄り掛かっているのは……女の子……
ん?女の子の頭には2本の小さなツノ、両肩に独特な模様が見える……魔族か!
エビルボアたちが突進のモーションを見せる。
さすがに今のままのユウマでは手も足も出ない。
『オーバードライブ!!』
ユウマのオーラが激しく渦巻く。
突進してくる2体のエビルボアを空中へと難なく躱し、魔族の少女とエビルボアの間に立つ形となるユウマ。
「人……族?……オ、オマエ!白オーラがそいつらに勝てるわけナンテない!!」
おお!魔族にはオーラの色が見えるんだな!なんか感動w
色々と説明してあげたいけど今はそんな場合じゃない。
それぞれ10回の重ね掛けで十分かな……
ユウマの右手と左手、それぞれに魔力が集中する。
よっと。
また突進モーションをとるエビルボア2体にユウマは猛スピードで迫る!
『ショック!!』
それぞれの手を2体のエビルボアにあてそう唱えると、電気ショックのようなものが起こりエビルボアたちは呻き声をあげながらその場に倒れた。
その光景を唖然とした顔で見つめる魔族の少女。
「いやぁ間に合って良かったよ」
(ここに向かう途中でオーバードライブを使っていればもっと早く助けられたと少し反省している)
「無詠唱で魔法を……オマエ……、一体なんナンだ……」
よく見ると歳は……魔族だからまったく解らないけど、見た目は俺より少し下ぐらいか。
小さいツノだけど若い魔族だからかな?
魔族なんて初めて見たから考えても無意味か。
「ああーー!キミ腕に怪我してるじゃん!」
「これクライ何ともない……」
何ともないと言いながら辛そうな顔で傷口を抑えている。
「だめだめ!回復魔法を使うから腕見せて」
『ヒール!』
ヒールは一般的な回復魔法だ。
「バッ!バカなのかオマエは!?人族の回復魔法は魔族ニハ効かな……」
「ん?なんだって?」
魔族の少女は混乱している。
それもそのはず。
魔族には他種族の回復魔法は効かない。
他種族にも魔族の回復魔法は効かない。
それがこの世界の理だったからだ。
だがユウマの回復魔法で魔族の少女の傷は見る見るうちに消えていった。
魔族に他種族の回復魔法が効かないなんて初めて知った!やっぱりまだまだ知らないことばかり……新たな知識との出会い、異世界サイコーw
「オマエ……訳が分からナイ……それにアノ魔物、生きテル?」
2体のエビルボアは相変わらず気絶したままだ。
「ん?ああ、魔法で気絶させただけだよ。食料も足りてるし、特に素材が欲しい訳でもないから命まで奪う必要ないからね」
ユウマの言葉を聞き、魔族の少女は過去に同じようなことを言った人物を思い出していた。
ぼーっとしている魔族の少女の頭の上に、ポンっとルルが舞い降りた。
「なっ!ドラゴン!しかもホワイトドラゴンーー!?」
ルルはどうやら眠たいらしく、クァ~っと可愛い欠伸をしている。
「こいつはルル。俺の大切な家族だ」
無邪気に笑うユウマを見て、呆れたように魔族の少女はその場にへたりこんだ。
人族がホワイトドラゴンと一緒にいるなんて、魔族にとってもびっくりする事なんだな。
「ほんと……ナンなのよオマエ……」
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