御伽噺《メルヒェン》VS少年期《ジュヴナイル》編
第2話 星と君が降る夜に
駆けろ、流れ星、夢の果てまで。駆けろ、禍つ星、滅びの果てまで。きっとそれが短くも尊い日々だとしても。それが過ぎ去るから人は過去を呼ぶのだろう。
とある流星が空を駆けた。そしてそれは街外れの山に落ちる。それは他でもない願いの禍つ星、甲斐少年だった。言伝は魔女ノ御茶会にも届く。
「来たわね」
「ええ」
「来たる曙星との決戦の日」
「我々の夜が来た」
一人一人が核弾頭より危険視される現代に生きる神秘。そんな彼女たちが世界の滅びに立ち向かう。
流れる星を見る少女がそれとは別に一人。
「甲斐くん」
冬城アキラ、世界の終わりに立ち向かう現代神秘軍のリーダーにして――甲斐エイスケの想い人。
そうこれは太古と現代、世界を巡る神秘の
――第五封印結界起動。
そんな音と共に少年は目を覚ます。
「ハッ!?」
四肢を光る鎖で拘束され中空に縛られた甲斐エイスケは魔女の一人と目が合う。
「……あんたがこれを?」
「いいえ」
「じゃあだれが」
「アンナ」
話にならない。
斥力が狭い部屋、いや牢獄を席巻する。しかしそれは魔女の前髪を揺さぶる程度の力しか発揮しなかった。
「なんで」
「キヒヒ良好良好」
***
一方、地上では。
「アレを返してもらおう」
「アレとは?」
「言わずとも分かるはずだ。口にするのもおぞましい曙星の使徒のこと!」
「ふぅん、なして?」
「もともと、アレの所有権はこちらにあった!」
「そうだったかしらねぇ」
「……しらばくれやがって魔女め」
銃器で武装した集団と黒衣の魔女達が対峙している。
そんな剣呑な雰囲気の中、一人の少女が黒衣の魔女の前に立つ。
「巫女……」
「私と交換ならどう? 利害は一致しているはずよ」
「ふん、どうかしらね」
「どうして!? あなたたちは世界を救いたいんじゃないの?」
「そっちこそ、世界を救いたいのならさっさと巫女を捧げたらどう?」
「それは……まだ時期が……」
「一年に一度、曙星が一番近づく時、ね。そんなもの待ってはいられないの」
明らかに魔女は何かを急いている。
「あなたたちなら……そもそも巫女も使徒も無しで曙星を――」
「それ以上はいけないわ」
魔女が転移して冬城の口を塞ぐ。銃器が一斉にそちらへ向く。
「――minimum」
銃器が突如、暴発する。
怪我人はゼロ、繰り返す、怪我人はゼロ。
「全軍に命じる。対魔術式は組み込んである。引き金を引け」
「で、ですが銃身が」
「いいから、引け」
男の圧するような声が辺りを支配する。
現代の魔女狩り部隊の長。その冷酷さは折り紙つきだ。
「怖いわマルステッド」
「黙れ魔女」
全員が引き金に手をかけて力を込めた。
その時だった。
地震?
いや違う。
地下からだ。
その揺れは地下から起きていた。
それが意味するところは――
***
地下。
「多重拘束! 多重拘束!?」
「うるせぇ――冬城が上にいるんだろ!?」
「お前、巫女に会うためだけにそんなでたらめな出力を!?」
「なんでもいい! 今こっから出て行って冬城と会うための力を寄越しやがれ――曙星!」
――仕方のないことだ。
――だがその在り方を容認したのはこちらだ。
――ならば応えねばなるまい。
斥力の嵐は暴風と化し地上へと膨れ上がる。
部屋が捲れ上がり、魔女の一人が浮かびあがる。
「アンナ!? マズいマズい!!」
『
「そのまさか!」
『分かったわ』
***
地上では。
「gian――」
「待ちなさいエル。ここでそれは街にも被害が出るわ」
「でもアンナ」
仮死のアンナ、道化の娘娘、比較のエル、そして沈黙のヴィヴィアンの四人を指して魔女ノ御茶会と呼ぶ。
「どうするつもり? 現代神秘連合軍
「それは過去の名だ。魔女ノ
そんなやり取りの間にも揺れは大きくなる。
「いいわ、教えてあげる。私がどうして『仮死』と呼ばれているか」
歌が、響く。
途端、全員の意識が遠のく。
「ブラフか!」
「ヴィヴィアンをフリーにしたのが悪かったわね!」
仮死はブラフ。つまり本命は沈黙。
「切り札は最後までとっておくものよ。ではオルヴォワール」
地下と呼ぶには高すぎた。
中空にて娘娘を引きずったまま甲斐は意識を手放す。
「おわーっ!? 馬鹿ぁ!? 落ちる落ちる!?」
「魔女なら飛びなさいな」
「アンナ! 私が飛べないの知ってるくせに!」
「そうだったかもね」
今宵、始まるは魔女の宴。
対するは現代の神秘、その名を
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