第十七話 歩翔君の重たい過去!?

十二月二日、歩翔君の家に朝早くやって来た。今日は梛の誕生日!

 集まれる場所が歩翔君の家しかなかったから、今日は歩翔君の家にいる。

 今は十時過ぎ。歩翔君のお母さん、鈴乃さんが手伝ってくれている。そのおかげで、テキパキ進んで、飾りつけ完了!ミュージック使いは坂本家で代々続いているから、ミューちゃんは鈴乃さんと喋ることが出来るんだって。

 梛が来るのはあと数分後。私は、部屋を見渡して頷いた。これでオッケー!

――ピンポ――ンッ。

 という音がした。

 梛が来た!私は期待に胸を弾ませる。喜んでくれるように頑張らないと……!

 「はい、こんにちは。こっちよ」

 「ありがとうございます」

 私は、クラッカーの紐を持った。

――ガチャッ。

――パ――――ンッ。

 「「ハッピーバースデー」でつ~」

 梛が部屋を見て、目を丸くする。きれいに飾りつけした部屋に驚いたみたい!

 「ありがとう!なぎめっちゃ嬉しいわっ」

 「ミュー、頑張りましたでつ」

 「私と鈴乃さん、歩翔君とミューちゃんで頑張ったんだよ」

 歩翔君は不愛想にイスに座っている。せっかく頑張ったなら、お迎えすればいいのに……。私は心の中でそう言いながら、リビングのイスに座った。

 「これ、誕生日プレゼントッ」

 私は梛にプレゼントを渡した。


〇┃⌒〇┃⌒


 もう一時間経つ。少しずつ雑談になって来ちゃった。でも楽しいから、イイヤッ。

 「お母さんからはシャーペン、お父さんからはピンもらったんだ」

 「っ!?」

 歩翔君がその言葉に息を飲む。昔のことを思いだしているような表情になった。何だか嫌なことを思い出しているような…。、ということわざを思いだした。

 「どうしたの?」

 「あ、ああ………。何でもない。ちょっと失礼する……」

 「「「?」」」

 歩翔君はうつむきがちになって、部屋を出て行ってしまった。

 え……何に悲しんでいるんだろう……。私は梛と目を見合わせた。

 「ごめんなさいね、ちょっと愛想悪くて」

 「そんなこと無いです。なぎ、何かヒドイこと言いましたか?

 梛は落ち込むように尋ねた。すると鈴乃さんは首を振る。

 「ちょっと昔を思い出したのよ。お父さんのことを」

 「お父さんの事?」

 「ええ」

 お父さん……。私は自分のお父さんを想像した。お父さんがどうしたんだろう?すると鈴乃さんが一枚の写真を手に取る。私達の前にソッとそれを置いた。

 「これが歩翔のお父さんよ」

 見せてくれたのは、歩翔君が七五三の時の写真だった。前も見たことがある。

 「この坂本家はミュージック使いになるのが決まりだから、歩翔が中学生になったらお役目を継がせようと思っていた。でも……」

 鈴乃さんの曇った顔を見て、私は黙ることしか出来なかった。

 歩翔君は出会ったときからミュージック使いの説明ばっちり……。きっと理由があるんだろう。私は瞼の裏に映るおばあちゃんの残像を振り払った。

 歩翔君のお父さんに会ったことが無いから、いやな想像をしてしまう。私は鈴乃さんの話を聞き続けることにした。

 「歩翔が小学四年生の頃、お父さんがブレスレットだけ置いて失踪したの……」

 「「「失踪……?」」」

 失踪って……。どこか分からないところにいなくなってしまうことだよね?それなら今、歩翔君のお父さんは行方不明なの?頭の中が混乱し始めていた。歩翔君がそんなに重たい過去を背負っていたなんて、想像していなかった。私は歩翔君に謝りたい気持ちでいっぱいになる。

 「捜索は一応したけど、全く見つからなかった」

 私はその出来事を心に刻んだ。歩翔君とお父さんが会えますように……。

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