第十五話 思い込みって激しいね!

えっ……?私の前に姿を現したのは、奏真君に奏太君、希沙ちゃんだった。

 ミューちゃんが涙をひっこめる。

 「ミュ――――!」

 「ジックッ!」

 ミューちゃんの名前を黒猫さんが呼ぶ。ミューちゃんと同じぐらいの大きさだ。しかも同じように浮いているっ。へっ!?

 「ジック、パートナーは見つかったのでつ?」

 「見つかってニャッ!希沙、奏真、奏太ニャ」

 ジックと呼ばれた黒猫は三人の名前を言う。

 「えっ――――!?希沙ちゃんや奏真君奏太君も使なんでつか!?」

 「そうニャ」

 「「「え!?」」」

 希沙ちゃん達がミュージック使い?えっ、ど、どういうこと?

 ミューちゃんは邪楽に捕まれながらも、笑顔になった。

 「……和音ちゃん達もミュージック使いなの?」

 希沙ちゃんに尋ねられて、私は恐る恐るうなずく。梛も訳ワカメの表情で固まった。

 希沙ちゃんが……ミュージック使い……!?私達は逆に邪楽だと思っていたのに……。

 「ミュージック使いの証が取られちゃったんでつ~」

 「えっ、そうなの?」

 「俺様達がチャチャッと邪楽を片づけて、取り返すぜ!」

 希沙ちゃん達を見て、邪楽が舌打ちをする。あ、歩翔君みたい……!こんなこと言った

 「あれ、じゃないかしら?」

 「そうだと僕も思う」

 「よし、やるぜ!」

 ――バッ。

 奏太君が、駆けだす。邪楽の着物の中に入ったブレスレットをすぐに取ってくれた。本当に……ミュージック使いなんだ!私は驚きを隠せない。

 邪楽が転んだと同時にミューちゃんも自由になった。

――♪♪

 すると、奏太君がブレスレットを差し出してくれる。私は急いでブレスレットをはめた。

 「ありがとう……っ」

 「大丈夫、それにしても三人ともミュージック使いなの?」

 「「うん」」

 「ミュージック使いのサポートをしているジックだニャ!ミューとは姉妹だニャ」

 「犬と猫だけど姉妹でつ」

 「自己紹介できたな、モタモタしてたら駄目だぜ、『格上シニア』を倒そう!」

 そうだった、確か楽器も無くなったんだ!

 『格上シニア』の生まれた楽曲を早く探そうっ。私は五人と二匹を見つめる。

 吹奏楽部の練習まで、あと三十分しかない。

 …着物だから、ベートーベンなど外国の人が作曲したものじゃないのかも。

 そして、着物の柄は桜。鮮やかなピンクや、くすんだピンクなど様々。きれいな柄だな。

 「日本人が作った、桜に関係すると思う」

 「なるほどね……」

 後は……。そう考えていたら、邪楽が動き出してしまった。

 嘘、希沙ちゃんが攻撃したのに……!とりあえず、私も鳴らそう!

――タンタンッ。

 「六色の色が使われてるね」

 「奏真、良く気づいた。さすが!」

 「六色の色使われているって事は、六人で演奏する曲?」

 六人……?何だか最近聞いた曲で六人演奏があった気がする。

 ブレスレットが無くなったときに……。朝流れてた……!

 「『さくらのうた』!最低六人で演奏できて、福田洋介さんが作った曲なんだ!」

 「そうなの?」

 「なら、やりまつ!歩翔君『music dictionary』出してくだつぁい!」

 「分かった」

 「待って、六人で演奏するってことは……」

 ミューちゃんはすぐさまmusic dictionaryを持つ。六人で演奏しなくちゃいけないのなら…。希沙ちゃんや奏真君奏太君とも一緒に演奏するの?

 「俺達は手を出して、豊共達はペンダントを持て。そして、叫ぶんだ。やってみよう」

 「「「「「「さくらのうた!」」」」」」

 私達が手を差し出す中、希沙ちゃん達三人は、胸元を触った。

 あれはペンダント……。楽器が三個出て来た!

 私と梛、歩翔君の分。……希沙ちゃん達の分が出てこない!そう思った瞬間、

 ポンと音をたててサックスにトロンボーン、ホルンが出て来た。

 ミューちゃんジックちゃんが『一、二、三』と指揮をとる。

――♬♬

 六つの音が耳に入って来た。

 重たいホルンの音、軽やかなサックス。トロンボーンの遠くへ響く音。重なり合うと、とても良い音になった。邪楽は何も喋らない。そのまま繰り返しに入った。

――♫

 終わりの音がなり、指揮も『止めろ』のポーズになる。消える、どう?

――スゥーーーッ。

 消えた……!

双子が、同じポーズで喜ぶ。顔は似て無くても、心は似ているみたい。

 「看板はもう閉まっておいたでつ」

 「あ、ありがとうっ」

 私と希沙ちゃんは手を重ねる。パチンと音がした。ミュージック使いが加わって、初めての演奏。大成功だ!

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