第十三話 邪楽のボスがいる!?

ふ――っ。重たいトランペットを部屋に置いた。

 「わぁ――! ずいぶんと質素な部屋」

 「希沙ちゃん、でもいいお部屋じゃない!?」

 「そうだね~」

 希沙ちゃんが汗をぬぐいながら、床にペタッと座り込んだ。

 夏は終わった……はずなのに、暑い!九月でも太陽はまぶしく輝いている。

 この三日間、希沙ちゃんと私が同じ部屋。部屋が散乱しないようにしなきゃ……えへへ。

 「もう昼なんだよね。えっと……」

 私はパンフレットを見る。今から…カレー作り!楽しみが心からどんどん湧き出てくる。

 「早く、行こっ」

  私はトランペット置いて、急いでカレーを作るための部屋に向かった。


 〇┃⌒〇┃⌒


 「「「「ごちそうさまでしたっ」」」」

 カレーを食べ終えて、私達は部屋に戻る。私がジャガイモを煮すぎてどろどろにしていまい、歩翔君に怒られた。でも、美味しかったから大丈夫!

 立ち上がると、ポケットに入れていたブレスレットが落ちてしまった。調理の時に、外していたんだ。

 「はい、落ちたわ。可愛いわね。……あ、次は、メインホールで演奏の練習よ」

 「ありがとう。希沙ちゃん、しっかり者!」

 ブレスレットを急いでつける。希沙ちゃんに言われて、私は部屋に入った。トランペットと楽譜を持って、メインホールに行かなきゃ!

 ロッカーをあさる。…………うん?無い、無いっ!トランペットのケースはあるけどトランペット自体が無い!これは、格上シニアの邪楽のせい!?嘘、こんなところまで邪楽がいるの…?やっぱり、邪楽のボスが吹奏楽部にいることは本当だったの!?そんな……。

 「和音ちゃん! ちょっと来てっ」

 梛が部屋の外から手招きをする。焦っている様子で、声も少し高い。靴を履き、梛へ駆け寄る。 すると、梛が楽譜を見せてくれた。

 「皆の楽器が無くなってるんや!」

 「私の方でも、楽器が無くなっていて…」

 「そうなん!?」

 梛が驚いたように目を開ける。私も梛の話を聞いてビックリした!

 「どうしよう…」 楽器が無くなっているんだ……」

 通り過ぎていく吹奏楽部部員の声に私と梛は目を見合わせる。他の部員の人達にも影響が出ているんだ!どうしよう……とりあえず、歩翔君に相談しないとっ。

  でも、男子の部屋に女子が近づいたら駄目だよね!?そうだ…ミューちゃんに歩翔君の所まで伝えに行ってもらおう!

 「ミューちゃ――ん」

 私がブレスレットに呼びかけてもミューちゃんが出てこない。廊下の空気が、ピキンと凍る。まさかミューちゃんブレスレットの中にいないの!?どうしようっ。

 「どうしたの?」

 「き、希沙ちゃん…! あのねっムゴムゴ」

 「ううん、何でもあらへんで」

 私が開けていた口を押える梛。梛、ちょっと力が強い!

 「和音ちゃん。ミュージック使いのことはナイショ!」

 耳元で梛が告げる。そうでした、ごめんなさい。

 「早く行かないと遅れるよ」

 「あ、ありがとう希沙ちゃんっ」

 私は部屋に入り、楽譜とケースを持つ。ケースと言っても中には何も入っていないんだけど……。どうしよう…。私は迷いながらも、そっと部屋を出た。


 〇┃⌒〇┃⌒


 宇神先生はため息を一つ、つく。ごめんなさいっ!

 「まぁ、全員が楽器を忘れたのなら……今日はここに置いてある楽器を使わせてもらう」

 宇神先生がそう言った。良かった……。

 「明日は持ってくるように!」

 そう言って、楽器を配る。皆は安心した反面、『どうして無くなった?』という疑問があるみたい。でも希沙ちゃんだけは楽器を持っている。どうしてだろう……?私は新しく渡された楽器を見つめた。

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